概要:猛烈な米債券相場上昇は、米金融当局の利上げサイクルが終了したとのトレーダーの確信を示している。現時点での論点は、利下げがいつ開始され、最終的にどの程度になるかに移っている。
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2023年12月4日 9:05 JST
経済が軟着陸になるのかスパイラル的に悪化するのかで意見分かれる
市場では来年少なくとも1.25ポイントの利下げが見込まれる
猛烈な米債券相場上昇は、米金融当局の利上げサイクルが終了したとのトレーダーの確信を示している。現時点での論点は、利下げがいつ開始され、最終的にどの程度になるかに移っている。
経済がソフトランディング(軟着陸)で落ち着くのか、あるいはスパイラル的に悪化するのかで意見が分かれている。どちらのシナリオでも、早ければ来年3月に利下げがあると想定されている。現在の市場では来年に少なくとも1.25ポイントの利下げが見込まれ、こうした動きとなれば、利回り低下と債券高継続への道が開かれるとみられる。
ただボラティリティーがさらに高まる可能性は否定できない。一貫性に欠けるデータが疑念を生むことも考えられ、米金融当局者は緩和を急いでいないと市場にリマインドし続ける公算が大きい。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1日、政策はかなり景気抑制的な領域に入っているとの見解を示す一方、緩和時期を臆測するのは現時点で「時期尚早」だと述べた。このけん制では、債券相場の一段の上昇に歯止めはかからなかった。
米国債相場の動きはあまりにも急ピッチだったかもしれない。またトレーダーは過去に方針転換の予想が早過ぎて痛手を負ってきた経緯がある。
だが、利回りは足元の局面でピークに達している印象があり、約6兆ドル(約878兆円)という記録的な水準にあるマネー・マーケット・ファンド(MMF)の資金では、統計の軟化を受けある時点でかなりの部分が、4%を超える期間長めの米国債利回りに引き寄せられるとも考えられる。指標の米国債利回りは、先月60bp低下したとはいえ、相次ぐ米銀破綻でリセッション(景気後退)懸念が高まった今年前半の低水準を大きく上回ったままだ。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のポートフォリオマネジャー、マイケル・カジル氏は「米金融当局はデータが軟化してきたと言及することで市場の動きを容認し、それが市場に一段の安心感をもたらしてきた。市場は想定で進み、若干行き過ぎる傾向がある」と指摘。「データ鈍化がもっと悪質なものである可能性もある」と分析した。
雇用統計など今週発表される一連のデータでは債券強気派の度量が試される。ブルームバーグのエコノミスト調査によると、11月の雇用者数増加は20万人と、前月の15万人から回復する見通し。失業率は3.9%で横ばいが予測され、平均時給は前年同月比4%上昇と、若干の鈍化が予想されている。