概要:為替の変動リスクに備えたプロテクションの購入コストが跳ね上がっている。各国・地域の経済指標発表および中央銀行の会合が相次ぐことから、来年の利下げへの転換時期が示唆される可能性にトレーダーが身構えている。
コンテンツにスキップする
2023年12月6日 12:27 JST
注目の米経済指標発表や金融政策決定会合を控えてヘッジ需要が再燃
ユーロ・ドルの1週間物IVは7月以来の高水準
為替の変動リスクに備えたプロテクションの購入コストが跳ね上がっている。各国・地域の経済指標発表および中央銀行の会合が相次ぐことから、来年の利下げへの転換時期が示唆される可能性にトレーダーが身構えている。
今後1週間には米国で注目の雇用統計や消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、同期間にユーロ・ドル相場が急速に騰落するリスクをヘッジするオプションのコストは、過去4カ月で最も高い水準となっている。
同様に、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日本銀行の金融政策決定会合が予定されている向こう2週間のドル・円相場のヘッジコストは、7月以来の水準まで上昇している。
ヘッジ需要急増の背景には、トレーダーが来年の一部中銀による政策金利引き下げ時期の予想を前倒ししている状況がある。中銀当局者らが「経済データによって判断する」との見解を頻繁に繰り返していることから、年内に予定される指標発表と金融政策決定会合の重要性が高まっている。
ウェルズ・ファーゴのマクロ・ストラテジスト、エリック・ネルソン氏は、「中銀の政策金利サイクルが引き上げから引き下げにシフトしつつあることで、金利のボラティリティーが高止まりしており、ついに為替のボラティリティーに賭ける動きがみられている」と指摘する。
市場の利下げ期待が楽観的過ぎるとの警告にもかかわらず、欧州中央銀行(ECB)が来年3月に最初の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げに踏み切るとの観測がほぼ完全に織り込まれている。わずか1週間前には利下げ開始が6月と予想されていた。24年年間では150bp近い利下げが見込まれている。
一方、市場は米金融当局の利下げ開始についてECBより少し遅い5月と見込んでおり、年間では130bp程度の利下げを織り込んでいる。
ECBが来年の早い時期に利下げを開始する可能性があるとの観測が強まったことで、ユーロ売りが活発化。対ドルでは、1ユーロ=1.10ドルを超える3カ月ぶりの高値から水準を切り下げている。
先週にドイツで発表されたインフレ指標が市場の予想を上回るペースでの鈍化を示したことを受けて、ユーロ・ドルの1週間物インプライド・ボラティリティー(IV)は6営業日連続で上昇し、8.63%に達した。1カ月物は11月上旬以来の高水準となっている。
ドル・円の2週間物ボラティリティーは11.80%と、7月下旬以来の水準まで急上昇している。