概要:欧州の金融当局者の中で最もタカ派の1人がインフレ率の鈍化を「心強い」と述べたのを受け、投資家は欧州が世界の主要中央銀行に先駆けて利下げに踏み切るとの見方に賭けている。
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2023年12月6日 10:47 JST
ECBタカ派のシュナーベル理事、追加利上げの可能性低いと発言
ブラックロックとゴールドマン、世界的に行き過ぎた賭けだと警告
世界の市場で利下げ観測が浮上する中、欧州では5日、ECBのタカ派として知られるシュナーベル理事が、インフレは「顕著な」鈍化を示しており追加利上げの「可能性はかなり低い」と発言したことでこうした見方が一段と強まった。市場は以前から追加引き締めの可能性に否定的だったが、シュナーベル氏は追加利上げの可能性を排除するのは時期尚早だと警告していた。
仮にトレーダーの見立てが正しければ、ECBは来年、主要中銀の中で最初に利下げを実施し、最も積極的な緩和サイクルに乗り出すことになる。それでも、ブラックロックやゴールドマン・サックスのストラテジストをはじめとするウォール街の一部有力者は、世界の中銀による利下げへの期待感は行き過ぎの様相を呈し始めていると警告している。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局は5月に最初の利下げを決め、政策金利を計1.25ポイント引き下げると予想されている。イングランド銀行(英中銀)は6月を皮切りに、0.25ポイントの利下げを3回実施し、4回目実施の可能性は30%と予想されている。1カ月前には、利下げが2回だけ織り込まれていた。
オーストラリアの金利市場は、豪準備銀行(中銀)が2024年半ばまでにあと1回利上げするとの見方から、同時期までに75%余りの確率で利下げするという予想に転換。先週、追加利上げが来年必要になる可能性を示したニュージーランド準備銀行(同)でさえ、今では5月までに利下げに踏み切る公算が大きいとみられている。
主要中銀が来年、経済の下支えで金融緩和を余儀なくされるとの見方が債券相場を押し上げており、11月は記録的な月となった。米国とドイツの10年債利回りは、ここ1カ月で45ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下。同年限の英国債利回りは30bp強低下した。