概要:米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月12-13日に開催した定例会合で、主要政策金利を2001年以来の高水準で据え置くことを全会一致で決定した。金利据え置きは3会合連続。また24年に複数回にわたって金利を引き下げるとの見通しを示し、積極的な利上げキャンペーンが終了したとのシグナルをこれまでで最も明確に発した。
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守護清恵、山口裕子
2023年12月14日 7:05 JST
米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月12-13日に開催した定例会合で、主要政策金利を2001年以来の高水準で据え置くことを全会一致で決定した。金利据え置きは3会合連続。また24年に複数回にわたって金利を引き下げるとの見通しを示し、積極的な利上げキャンペーンが終了したとのシグナルをこれまでで最も明確に発した。
これについての市場関係者の見方は以下の通り。
◎スペクトラ・マーケッツのブレント・ドネリー社長:
パウエルFRB議長は追加利上げのわずかな可能性は認めたものの、FOMCが方向転換したと明確なシグナルを発した。問題は利下げがあるかどうかではなく、いつあるかだ
◎インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザカレリ最高投資責任者(CIO):
今年のサンタクロース・ラリーは早く来たか、ちょうど始まるところだ。弱気派はカバーに動き、冬眠に入らなければならないかもしれない
23年の消費の回復力と株式相場の好調さにはうれしい驚きを感じているため、24年に向けては悲観論を多少弱めざるを得ないが、ここまでの米利上げのスピードと規模は十分承知しており、今後数年間に直面するリスクを楽観してはいない
◎グローバルXのジョン・メイヤーCIO:
FOMCの金利予測分布図(ドットプロット)が市場の予測に近づいたことを市場は歓迎している。これは現在の政策金利を据え置く決定だけではなく、経済が金融当局の長期目標に沿うように見受けられることへの称賛だ
◎GAMインベストメンツの投資ディレクター、チャールズ・ヘプワース氏:
債券に関する限り、年内最後の金融政策決定会合で当局から大きな早めのクリスマスプレゼントが贈られた。米国債市場では利回り曲線全体で利回りが大幅に低下している
◎ボルビン・ウェルス・マネジメント・グループのジーナ・ボルビン社長:
米金融当局はこの日、ついに初めてインフレについて肯定的にコメントし、市場に一足早いホリデーギフトを贈った。 当局はインフレが鈍化傾向にあることを認めており、方針転換が見られたと言えよう。市場が米当局に向かって動いているというより、米当局が市場の方向に動いているように見受けられる。「サンタクロース・ラリー」は続くかもしれない
◎イートロの米投資アナリスト、キャリー・コックス氏:
米金融当局はソフトランディング(軟着陸)を実現しつつあると考えている。市場も明らかにそれを信じている。当局者は来年、数回の利下げを見込んでおり、それも祝いの利下げのようにみえる
誰も将来のことははっきり分からない。だからこそ機敏に行動し、金利が当面高止まりするであろう点を心にとどめておくことが重要だ。とはいえ、米金融当局の姿勢は年末まで利下げトレードを持続させる可能性がある
◎KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏:
米当局者はこの政策声明と見通しを承認した。想定しうる限りのハト派的な内容であり、ハト派という点で私の想像以上だった。パウエル議長がこれを撤回するのは難しいだろう。米当局者全員がこれを認めていることを踏まえれば、議長が撤回するとは思わない
◎Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏:
インフレは正しい方向に進んでいる。だが、米金融当局は来年3回の利下げを見込んでいるにもかかわらず、今回の政策声明でタカ派的なトーンを維持した。投資家は新年も、ほぼ同じような展開を想定すべきだ。米金融当局は金融政策が景気を減速させ、インフレを冷やし始めるのにこれほど長く待つことを余儀なくされた。ようやくゴールが視界に入ってきたからといって、慎重さを忘れて前のめりになるようなことはしないだろう
◎インカム・リサーチ+マネジメントのシニア・ポートフォリオマネジャー、スコット・パイク氏:
よりハト派的な米金融当局は24年に債券資産クラスだけでなくリスク資産にとっても追い風になろう。利下げに関する米当局の動きが市場の想定より鈍くならざるを得ないリスクは残っており、それはこの日の会合以外での展開を必要とする話だ
◎ダブルライン・キャピタルの創業者ジェフリー・ガンドラック氏:
当局は予想より多くの利下げを余儀なくされる
消費者物価指数(CPI)上昇率は来年6月までに前年同月比2.4%になる可能性があり、CPIモデルはあと1カ月は3%台の数字になることを示唆
米10年債利回りが来年3%台前半になる可能性が高い
2024年上半期にイールドカーブの長短逆転が解消される可能性が高い
◎エバコアのクリシュナ・グハ副会長:
FOMC声明文と最新の経済予測はハト派的でリスクオンだ。声明文には「インフレはこの1年で緩和した」と評価する新たな文言が盛り込まれ、来年の金利予測は中央値で3回の利下げだ
◎トレードステーションの市場戦略グローバル責任者デービッド・ラッセル氏:
パウエル議長はパンチボウルを取り除いたようだ。トレーダーは今回の発表まで慎重姿勢を予想していたが、米当局はインフレ緩和を認めたためハト派的だった。積極的な引き締めの必要性は比較的低いと政策当局者が考えていることを示唆する文言の大きな変化だ
◎ アリアンツ・インベストメント・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、チャーリー・リプリー氏:
投資家コミュニティーの話題は全般として、最後の利上げ予想から最初の利下げ予想に移ってきた。その作業の大半はドット・プロットを含む経済予測更新を通じて行われたが、パウエル議長が今回の会合でハト派的な姿勢を示したのは確かだ。実際のところ、インフレ対策は奏功しており、現時点で当局は現行のフェデラルファンド(FF)金利が24年に景気抑制的になり過ぎるとみている
米当局は利上げを3回会合連続で見送っており3度目の正直だ。当局はこのサイクルでの利上げを終了したと、今や投資家は十分確信できる。さらに、計0.75ポイントの利下げ想定を伴うハト派的なトーンは、インフレに対する勝利宣言だけでなく、パウエル議長らが経済のソフトランディング実現に向けて準備を整えていることを示唆している