概要:米国では企業が支払いに窮するとの懸念が大きく後退している。来年に利下げが始まるとの期待が投資家の間で強まっていることが背景にある。
2023年12月20日 1:01 JST
高格付け米社債のスプレッド、昨年1月以来の水準に縮小
利回り低下が続けば中銀にとって利下げの論拠は弱まる
米国では企業が支払いに窮するとの懸念が大きく後退している。来年に利下げが始まるとの期待が投資家の間で強まっていることが背景にある。
ブルームバーグ指数のスプレッドデータによると、投資家が米社債を購入する際に要求する国債に対する上乗せ利回りは、2022年1月以来の水準付近に低下した。世界のジャンク(投資不適格)債の利回りは2月以来の低水準近辺となっている。米国では一般に取引される証券の中で最もリスクが高い「CCC」格付け債券のリターン指数が10月末以降に8.5%急上昇している。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が10月31-11月1日に開催した会合以降、資産運用各社はあらゆる債券に資金を投じている。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は同会合後の記者会見で、利上げが終了した可能性を示唆した。債券へのこうした需要で企業の借り入れコストは低下している。
世界の高格付け社債の利回りは4月以来の低水準となっており、企業による借り入れが割安になり、中銀にとっては利下げの根拠が弱まる格好となっている。長期借り入れ金利の急低下は、米金融当局者らが市場で広がる来年の利下げ期待をけん制しようとしている理由を説明する一助になるかもしれない。
RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「これは2024年第1四半期の経済活動を押し上げる要因となり得る。従って、誰もが予測していた活動減速はずっと先送りされる可能性がある」と指摘。「実際にそうなれば、利下げ期待は裏切られることになる」と述べた。