概要:20日の米株式相場は反落。午後の取引で急速に下げた。最近の相場上昇は米金融政策が方向転換したとの見方を背景に弾みがついていたが、市場の一部では警戒感が高まっていた。
米10年債利回り、7月以来の低水準-世界的な債券買いの流れ
ポンドは対ドルで一時0.8%下落-英CPIが予想以上に鈍化
ニューエッジ・ウェルスのキャメロン・ドーソン最高投資責任者(CIO)は「間違いなく、非常に一方向に傾いた展開になっているように見える。皆がボートの片側に乗っている時は恐ろしい」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「相場は伸びきっており、明らかに買われ過ぎの状態だ。しかし今はメルトアップの時期であるため、相場が下落する前に一段とばかばかしい状況になることがしばしばある」と述べた。
12月の米消費者信頼感指数は前月からの伸びが2021年3月以来の大きさとなった。2カ月連続の上昇で、リセッション(景気後退)に対する消費者の懸念が薄れていることを示すが、エコノミストらは雇用市場に関する慎重な見方を崩していない。
米消費者信頼感指数、2021年以来の大幅上昇-楽観の強まり反映 (1)
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏は「消費者信頼感の改善持続は消費者の態度や支出に関する前向きなシグナルとなるだろうが、景気抑制的な政策スタンスに伴う労働市場の状況軟化がこの先の需要や消費、成長に重しとなる公算が大きい」とリポートで指摘した。
この日発表された別の米経済データでは、11月の中古住宅販売件数が市場予想に反して小幅に増加。15日終了週の30年物固定住宅ローン金利は5週連続で低下し、6月以来の低水準となった。
米中古住宅販売、11月は予想外に小幅増-なお2010年以来の低水準付近
一部の強気派からは、米国株が来年さらに強含むとの声が聞かれる。労働市場の堅調さ持続と米利下げへの確信の強まりが背景で、ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのトム・リー氏は、S&P500種が2024年に5200に達すると予想している。
しかし、最近の上昇傾向に警戒心を解かない市場参加者もいる。モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのポートフォリオソリューションズCIO、ジム・キャロン氏は「今はただ、この平穏を楽しもう」と、ブルームバーグテレビジョンで発言。「この先はもっとずっと不安定で不確実なものになるだろう」と述べた。
個別銘柄では物流大手のフェデックスが12%安。前日に発表した9-11月(第2四半期)決算で、利益がアナリスト予想を下回った。米経済の先行きを占う存在と見なされる同社の業績不振が景気後退への懸念を強めた。
紅海を航行する商船を親イラン武装組織フーシ派が攻撃しているため、運送各社は貨物輸送を迂回(うかい)させている。投資家は輸送の遅れや運送コスト上昇につながるリスクについても慎重に検討し始めている。
紅海の商船攻撃、世界経済の新たなリスクに-価格上昇と輸送遅延で
米国債
米国債相場は上昇(利回り低下)。来年の利下げ観測が一段と強まったことによる世界的な債券高の流れが波及した。10年債利回りは7月以来の低水準。10月には16年ぶり高水準の5.02%を付けていたが、その水準を1ポイント余り下回る。米20年債入札の後も利回りは低い水準にとどまった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.98% | -5.5 | -1.35% |
米10年債利回り | 3.85% | -8.4 | -2.13% |
米2年債利回り | 4.33% | -10.8 | -2.44% |
米東部時間 | 16時37分 |
欧州ではドイツ10年債利回りが2%を割り込み、英10年債利回りは4月以来の低水準となった。英国のインフレ率が予想以上に鈍化したことを受け、来年は米国などで積極的な金融緩和が進むとの観測が強まった。
英国のインフレ率、11月は3.9%に鈍化-2年余りで最も低い水準 (1)
PGIMフィクスト・インカムの米国担当チーフエコノミスト、トム・ポーセリ氏は「米金融当局は来年数回の利下げを行う。経済成長は減速し、一部の人たちにはかなり景気後退感を与えるだろう」と述べた。
外為
外国為替市場ではドル指数が上昇。地政学的な緊張の高まりに加え、利益確定売りなどで米国株が下落する中、安全な逃避先と見なされるドルが薄商いの中で買いを集めた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1226.72 | 3.64 | 0.30% |
ドル/円 | ¥143.62 | -¥0.22 | -0.15% |
ユーロ/ドル | $1.0943 | -$0.0038 | -0.35% |
米東部時間 | 16時37分 |
円は対ドルで一時、1ドル=143円前半に上昇したが、その後は上げ幅を縮小し、143円台後半での推移となった。
ポンドは他の主要10通貨に対して軟調。対ドルで一時0.8%下落した。11月の英消費者物価指数(CPI)が前年同月比3.9%上昇と、10月の4.6%上昇から大きく鈍化したことが背景。エコノミスト予想の中央値は4.3%上昇だった。
原油
ニューヨーク原油先物相場は3日続伸。米国の原油在庫が増加したものの、紅海での通航障害のリスクから買いが優勢になった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物の2月限は約2ドルの値幅で上下動し、1バレル=74ドル近くで終えた。米エネルギー省の統計で在庫の大幅増に加え、原油生産が過去最高になったことが明らかになり、過剰供給を巡る懸念が一段と強まった。
CIBCプライベート・ウェルスのシニアエネルギートレーダー、レベッカ・バビン氏(ニューヨーク在勤)は「市場はショートに傾いており、センチメントは悪い。来年に供給過剰という不安定な状況に陥るとのテーマを弱気派が捨てているとは思えない」と述べた。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)グループ・ホールディングスのシニア商品ストラテジスト、ダニエル・ハインズ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「紅海での緊張の高まりは、原油の見通しを大きく変えるものではないが、紛争がエスカレートする可能性を示唆しており、これは重大な意味を持つかもしれない」と発言。「市場が考慮しなければならない高いリスクだ」と語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は前日比28セント(0.4%)高の1バレル=74.22ドルで終了した。ロンドンICEの北海ブレント2月限は0.6%上げて79.70ドル。
金
ニューヨーク金相場は小反落。米中古住宅販売件数と消費者信頼感指数が予想を上回ったことから、米国債利回りが低下幅を縮小し、金は売りがやや優勢になった。
金は通常、金利と逆相関の関係にあり、金利が低下するほど、金は上昇する。最近の価格動向は米金融政策見通しの変化に左右されている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比4.40ドル(0.2%)安の1オンス=2047.70ドルで取引を終えた。金スポット価格はニューヨーク時間午後2時15分現在、0.2%安の2036.31ドル。