概要:セクターを選択したり流行のオプション戦略を駆使したり高配当銘柄に集中投資したりと、ウォール街は今年、米株投資でさまざまな戦略を試みたが、シンプルにS&P500種株価指数に投資することに勝る取引はなかった。
株式ファンドへの今年の流入、S&P500連動の4本が3分の1以上
セクターETFからは120億ドルが流出、過去最悪
セクターを選択したり流行のオプション戦略を駆使したり高配当銘柄に集中投資したりと、ウォール街は今年、米株投資でさまざまな戦略を試みたが、シンプルにS&P500種株価指数に投資することに勝る取引はなかった。
2023年が終わろうとしている今、投資家はシンプル・イズ・ベストの教訓を心に刻んでいる。
S&P500種は今月4%上昇し年初来の上昇率は24%に達した。こうした中で投資家は株式上場投資信託(ETF)に資金を振り向けている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによると、12月の株式ETFへの資金流入額は690億ドル(約9兆8000億円)近くに達し、過去2年で最大となった。S&P500種に連動するSPDR・S&P・ETFトラスト(SPY)には420億ドル以上の資金が流入し、データのある1998年以降で最大の月間流入となる勢いだ。
米株の指標であるS&P500種を買い保有し続けるという、これまで何度も成功してきた戦略の正しさが今年、証明された。ディフェンシブと称された多くの戦略は結局、偽装されたマーケットタイミングでしかなかった。
B・ライリー・ウェルスのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「分散されたポートフォリオを持つことが投資環境を乗り切る最良の方法であることは明らかで、その最良の方法はS&P500種を保有することだ。年初に『誰もが不況がやってくると言っているから、ディフェンシブに投資する』と言っていた人は打撃を被っただろう」と話した。
年初には多くのストラテジストが今年の低調なリターンを予想していた。しかし、インフレが鈍化する一方で経済が持ちこたえる兆しが続く中、株価は年間を通じて堅調に上昇。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が来年の利下げを示唆したことで、ここ数日は急上昇した。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフグローバルストラテジスト、シーマ・シャー氏は資金流入について「果敢ではあるが、まったく予想外というわけでもない」として「パウエル議長がスタンスを少し変えたような気配を感じるとすぐに、株式市場に大量の資金が押し寄せた」と語った。
S&P500種は20日、1.5%安と今年最悪の下落を演じたが、資金流入は鈍っていない。S&P500種は結局、週ベースでは0.8%高と8週連続の上昇となり、17年以降の最長を記録した。
メインステイ・キャピタル・マネジメントの創業者デービッド・クドラ氏はブルームバーグラジオのインタビューで「ほとんどメルトアップしているような状態だ」と話した。
BIのETFアナリスト、アタナシオス・プサロファギス氏によると、株式ファンドには今年、全体で3490億ドルの資金が流入。22年の3980億ドルには及ばなかったものの、3分の1以上がS&P500種に連動する4本に流入しそのシェアは過去最大だという。
一方、エネルギーや公益事業といった特定のセクターに連動するセクターETFからは120億ドルが流出し、過去最悪の年となった。
BIによると、テーマ型ファンド、ESG商品、ファクター、アクティブ運用商品など「準アクティブ」ETFのうち、今年指数連動をアウトパフォームしたのはわずか31%だった。
「今年を振り返って人々は『S&P500種に投資していればもっと良い成績が得られたのに、なぜわざわざファクター投資やセクター別投資をしたのだろう』と思うだろう」と、B・ライリーのホーガン氏は述べた。