概要:翌日物資金調達市場では昨年末に見られたボラティリティー(変動性)が和らぎ、ウォール街の関心は米連邦準備制度理事会(FRB)が深刻な混乱を引き起こすことなくバランスシートの縮小を継続できるかという問題に戻ってきた。
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2024年1月3日 6:08 JST
RRP預入額、3136億ドル減少-QT終了のタイミング見極めで注目
RRP枯渇前のQT停止に強い論拠-ライトソンのクランドール氏
翌日物資金調達市場では昨年末に見られたボラティリティー(変動性)が和らぎ、ウォール街の関心は米連邦準備制度理事会(FRB)が深刻な混乱を引き起こすことなくバランスシートの縮小を継続できるかという問題に戻ってきた。
資金の待機場所であるFRBのリバース・レポ(RRP)ファシリティーに、トレーダーから精察の目が向けられている。利用者はこれまで、もっと高い利回りで運用するためにこのファシリティーから資金を引き出してきたが、同ファシリティー利用額がゼロに向かって細るのに伴い、レポ市場のボラティリティーは改めて加熱すると予想される。
先週には担保付翌日物調達金利(SOFR)が過去最高に急伸したが、そうした波乱は今後増え、深刻度を増すとみられている。米国債入札の決済が完了し、年末に向けたタームファンディングのポジションが満期を迎えれば、米国債を担保とする翌日物レポ金利は今週、正常化が見込まれる。ニューヨーク連銀が2日に発表したデータによれば、レポ取引を集計して公表されるSOFRは12月29日時点で5.38%と、過去最高の5.40%から下げていた。
しかしここ最近の変動は、こうした金利が今後迎える事態の予告に過ぎないかもしれない。
ライトソンICAPのエコノミスト、ルー・クランドール氏は「RRPファシリティーが完全に空になるまでFRBがバランスシート縮小を続ける場合、SOFRが描く日々のパターンは数四半期前から見られる安定ではなく、2020年より前に経験した状況に似るだろう」と顧客リポートで指摘した。
2日のRRPファシリティーには約78のカウンターパーティーが合計7049億ドル(約99兆9100億円)を預け入れた。前営業日から3136億ドル減少し、年初の減少としては同ファシリティーが創設された2013年以来で3番目に大きな額となった。
上段:FRBのRRPファシリティー預入額、下段:日ごとの変化
出所:ニューヨーク連銀
同ファシリティーの残高は2023年が最終週を迎えるまでに1兆4000億ドル近く急減。2021年以来の低水準に落ちていた。米財務省による財務省短期証券(Tビル)の大量発行と、米利上げ終了の確信がこの動きを導いた。
ウォール街のストラテジストらはRRP残高が6月末までに完全に枯渇すると予想。FRBはその時点で量的引き締め(QT)を停止せざるを得なくなる。銀行の準備額が当局想定より乏しいことが判明すれば、その見込みはますます強まる。
だからこそFRBはRRPファシリティーが枯渇する前にバランスシートのランオフをやめなくてはならないと、クランドール氏は述べている。そうしておけば、資金調達市場が急激に緊張した場合でもファシリティーに残されたキャッシュをレポ市場に再投入することが可能になる。
「前にも指摘した通り、この春か夏、日々のRRPファシリティー利用が構造的にプラスにある間にQTを停止することに強い論拠があると考える」と説明した。