概要:2024年最初の取引日となった2日の米金融市場では、S&P500種株価指数が下落。国債相場も下落(利回りは上昇)した。市場では今年の大幅利下げ観測が後退している。
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2024年1月3日 6:41 JST
大幅な利下げ観測が後退、米10年債利回りは一時9bp上昇
能登半島地震で日銀マイナス金利「早期解除は困難」の声も
2024年最初の取引日となった2日の米金融市場では、S&P500種株価指数が下落。国債相場も下落(利回りは上昇)した。市場では今年の大幅利下げ観測が後退している。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4742.83 | -27.00 | -0.57% |
ダウ工業株30種平均 | 37715.04 | 25.50 | 0.07% |
ナスダック総合指数 | 14765.94 | -245.41 | -1.63% |
「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるテクノロジー大手7社が軟調。ハイテク銘柄の比重が高いナスダック100指数は1.7%下落し、2カ月ぶりの大幅安となった。アップル株は3.6%下落し、昨年11月13日以来の安値。最新型iPhone(アイフォーン)の需要が振るわないとの見方に基づき、同社の株式投資判断をバークレイズが「アンダーウエート」に引き下げたことが響いた。JPモルガン・チェース株は1.2%高の172.08ドルで終了。上場来高値を更新した。これまでの終値ベースの最高値は、2021年10月22日に付けた171.78ドルだった。
アップル株下落、バークレイズが弱気派に加わる-iPhone需要軟化警戒
2023年の米株上昇を予想していた少数派の1人、ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのトム・リー氏は、今年も株価は好調に推移するとみている。ただ、最初の5日間が相場の基調を方向付けることになり、軟調に推移すれば強気予想が否定される可能性があるとも述べた。
オッペンハイマー・アセット・マネジメントのチーフストラテジスト、ジョン・ストルツファス氏も米株強気派だが、次の決算シーズンを迎えるまでは一服感が広がるとの見方を示している。
ストルツファス氏は「昨年第4四半期(10-12月)に経験したような強気相場後に市場が一時停止するのは珍しいことではない」と顧客向けリポートで指摘。10月に付けた安値からの「株価上昇を考えれば、一服するのは理にかなっていると思われる」と述べた。
市場参加者は労働市場の状況を見極めようと、3日発表の2023年11月求人件数と5日発表の12月雇用統計に注目するとみられる。
アナ・ウォン氏らブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストは「パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が言うように失業率の急上昇を招かずにインフレ率が一段と低下すれば、株高・債券高は正当化される」と指摘。「しかし、伝統的な経済の経験則が当てはまるのであれば、ディスインレは痛みと無縁とはならない。利上げによる労働市場への影響のピークは今まさに訪れようとしているところだ」と論じた。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は米経済について、インフレを抑制するという金融当局の「決意」が奏功し、「確実」にソフトランディングに向かっているとの認識を示した。
IMF専務理事、米経済は「確実」に軟着陸へ-FRB政策が寄与
米国債
米国債市場は利回りが大幅に上昇し、世界的な債券売りの流れに加わる格好となった。市場では、欧米などの主要中央銀行が大幅な利下げに踏み切るとの見方が後退。10年債利回りは一時9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して3.97%を付けた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.08% | 5.1 | 1.27% |
米10年債利回り | 3.94% | 5.6 | 1.44% |
米2年債利回り | 4.32% | 6.8 | 1.60% |
米東部時間 | 16時40分 |
UBSグループの金利ストラテジスト、エマヌイル・カリマリス氏は「市場はこの先、恐らくもう少し弱気のトーンを帯びるはずだ」と、ブルームバーグテレビジョンで指摘。「欧州中央銀行(ECB)や他の中銀は警報解除信号を発してはいない」と述べた。
大規模な社債発行の見通しも、債券相場の重しとなっているとみられる。
TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「すでに多くの企業ディールが発表されており、相場の動きの背景には供給要因があると思われる」と指摘。「しかし大局的に見れば、市場は重要な経済データの発表を前に引き続き値固めしようとしている」と述べた。
為替
外国為替市場ではドルが上昇。米国債利回り上昇が支援材料となったほか、地政学的緊張の高まりで投資家のリスク選好が後退したことも背景にある。
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為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1221.56 | 8.67 | 0.71% |
ドル/円 | ¥141.96 | ¥1.07 | 0.76% |
ユーロ/ドル | $1.0941 | -$0.0104 | -0.94% |
米東部時間 | 16時40分 |
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.7%上昇し、昨年3月以来の大幅高を記録した。
ドルは対円では一時142円21銭まで上昇。石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震の被害が明らかになるにつれ、今年前半に予想されていた日本銀行のマイナス金利の解除は困難になったとの声が市場では出ている。
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一方でドイツ銀行のマクロストラテジスト、アラン・ラスキン氏は2日のリポートで、ドルは対円で過大評価されていると指摘。金利スプレッドから判断すると円は1ドル=140円50銭近くで取引されるべきだとの見方を示した。
原油
ニューヨーク原油相場は続落。紅海で緊張が高まりつつあることへの懸念はあるが、市場全般にリスク回避のセンチメントが広がる中、上げを消す展開となった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物2月限は3ドルを超える値幅で上下し、1バレル=70ドル近くで終えた。株式相場の下落につられた。ホリデー休暇明けで商いは引き続き薄く、値動きが増幅された。
これより先には、米海軍がイエメンの親イラン武装組織フーシ派のボート3隻を攻撃したのを受け、イランが紅海に駆逐艦を派遣したことから、原油は値上がりしていた。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「イランによる紅海への軍艦派遣はそれほど警戒すべきものではないが、原油の神経質な取引が続く要因にはなる」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前営業日比1.60ドル(0.1%)高の1オンス=2073.40ドルで終了した。