概要:米テクノロジー業界は今年、複数企業による大規模な人員削減の発表で幕を開けた。それは急激な業界後退へとつながった2023年の始まりをほうふつとさせる。
アマゾンとグーグル、数百人規模の人員削減を相次ぎ発表
AI普及が一部職種に大きく影響、語学アプリ会社は翻訳者削減
米テクノロジー業界は今年、複数企業による大規模な人員削減の発表で幕を開けた。それは急激な業界後退へとつながった2023年の始まりをほうふつとさせる。
米アマゾン・ドット・コムは、プライム・ビデオやライブストリーミングサービス部門「Twitch(トゥイッチ)」を含むコンテンツ制作部門で数百人を削減する。米アルファベット傘下のグーグルも、ハードウエアと「アシスタント」部門で数百人を削減することを明らかにした。「ポケモンGO」などの人気モバイルゲームを支える技術を提供する米ユニティ・ソフトウエアは従業員を25%削減する方針だ。約1800人が職を失うことになる。
1年前に米メタ・プラットフォームズや米セールスフォースが発表した人員削減に比べると規模は小さいものの、今回の動きはテクノロジー業界が過去10年間の大半で見られたような急成長はまだ取り戻せていないことを示している。金利上昇に伴い、多くの企業は増収よりも利益に軸足を移した。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、プーナム・ゴヤル氏は、アマゾンの人員削減は「利益拡大を図るためのさらなるコスト削減と効率化に向けた動きだろう」と述べた。
AI普及と労働者の不安
生成人工知能(AI)の普及によって影響を受ける可能性のあるクリエイティブな仕事では、労働者の不安は特に深刻だ。生成AIは執筆や映像制作に必要な労働力の削減を可能にする。モバイル語学学習アプリが広く利用されている米デュオリンゴはAIの使用拡大もあり、翻訳者などの契約社員を10%削減した。
ウォール街の一部では、昨年と打って変わり、今年は企業合併の波が押し寄せるとの期待がある。これまでを見ると、大規模な買収は人員削減をもたらしている。
米ネットワーク機器メーカー、ジュニパー・ネットワークスとの合併を発表した米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のアントニオ・ネリ最高経営責任者(CEO)は10日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、ジュニパーでは自動化を通じたコスト削減が可能だろうと語った。
ハイテク業界の雇用見通し
暗い兆しにもかかわらず、データでは雇用市場の安定が示されつつある。世界のテクノロジー業界の人員削減を追跡しているレイオフズ・fyiによると、技術系労働者のレイオフ数は23年1-3月(第1四半期)にピークを迎え、その後は着実に減少している。同サイトの計算によると、昨年はテクノロジー企業1186社が合計26万2600人余りを削減した。今月1日以降では18社が2945人を削減したという。
人材派遣会社インサイト・グローバルのバート・ビーンCEOは「状況は落ち着きつつあるのではないか」と語る。
ただし人員削減が落ち着いたとしても、多くの雇用主は依然として利益重視の姿勢を崩していない。ビーン氏は企業はなお雇用に慎重であり、求職者が複数のオファーを受けることはあまり一般的ではないと付け加えた。