概要:米金融当局による一連の利下げを見込む債券トレーダーは、利回りが低下方向にあるとの確信を強めているが、その道筋は浮き沈みの多いものとなりそうだ。
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2024年1月15日 7:47 JST
スワップトレーダー、年内6回利下げ想定-金融当局見通しの2倍強
米10年債利回りは4%台を中心に推移へ-PGIM
米金融当局による一連の利下げを見込む債券トレーダーは、利回りが低下方向にあるとの確信を強めているが、その道筋は浮き沈みの多いものとなりそうだ。
昨年大きな波乱に見舞われた米国債相場は、投資家がインフレ減速の兆候に注目し、中央銀行が利下げ観測の扉を開いたことから年末にかけて上昇した。今年初め市場は比較的不安定になったものの、トレーダーは大幅な金融緩和が間もなく実施されるとの見方を強めている。
12日発表の昨年12月の生産者物価指数(PPI)は市場予想に反して前月比低下となるなど、最近のインフレや雇用の統計を受け、市場が織り込む3月利下げ開始の確率は80%に達し、指標の米2年債利回りは昨年5月以来の低水準を付けた。米金融当局者は今年の利下げペースがもっと緩やかなペースになると主張し続けているにもかかわらずだ。
2024年全体では、スワップトレーダーは0.25ポイント利下げを少なくとも6回想定しており、金融当局者が昨年12月に四半期予測で示唆した利下げの2倍以上を織り込んでいる。その後、労働市場の逼迫(ひっぱく)とインフレ緩和を示す証拠がトレーダーを活気づけ、今年の積極的な緩和策に賭ける動きが続いているが、年内の利下げ幅予想は主要指標の発表前後で起伏がみられる。
この議論がどちらかに決着するまでは、多少の波乱が予想される。根底にある不確実性は長期債利回り予想の幅広さにも表れており、大きな勝者と敗者を生み出す下地となっている。祝日で営業日の少ない今週に発表されるデータや米金融当局者の発言で何らかの確実性が出てくる可能性は低いだろう。
PGIMフィクスト・インカムのチーフ投資ストラテジスト、ロバート・ティップ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で、米金融当局はディスインフレの「証拠が確実に得られるまで長期間待つつもりだ」と指摘。「証拠となるデータには起伏がある。そのため、レンジ取引の環境が見込まれる中では今は比較的中立的な姿勢で臨むのが理にかなう」との見方を示した。
ティップ氏によれば、10年債利回りは4%台を中心に推移するだろうが、年限によって利回りの変動が激しくなり、投資家に取引機会を提供しそうだ。期間が2年から30年の国債利回りはいずれも4%の上下約30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以内にある。
長期的には、米国債の供給や地政学的緊張、今後の選挙との兼ね合いもあり、緩和シナリオがどう展開されるかを巡る不確実性は続く。
アポロ・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は先週のリポートで、こうした未知の要素が長期金利予測に大きな食い違いをもたらしており、市場にとって「忙しい年」になる下地となっていると指摘した。
15日はキング牧師生誕記念日の祝日で米金融市場は休場となり、今週は主要な経済指標は少ないため、債券相場はボラティリティーが高まる可能性がある。一方、一部の金融当局者は量的引き締めを通じてバランスシートのランオフ(償還に伴う保有証券減少)を近く減速させる必要性に言及しており、金融政策面で新たな不確実性が生じている。