概要:パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長ら米金融当局者は、子供たちと長いドライブ旅行に出掛ける親のような気分なのかもしれない。利下げを熱望する投資家は金融政策決定者に「まだか」と問い続け、「もうすぐだが、まだだ」との答えが繰り返されている。
FOMC、経済が良好なため時間かけて利下げ判断-物価動向で決断
利下げ後に再利上げ強いられることが最悪の結果-ボスティック総裁
前回の12月会合後、パウエル議長は利下げについて議論したことを認め、金融当局者は最近、利下げに向けた大まかなパラメーターの議論を始める用意があることを示唆している。インフレ率が予想より速く低下した場合、2024年前半に利下げを実施する意向を示した当局者もいる。
FOMC、3会合連続で金利据え置き-24年に複数回利下げを予想 (3)
しかし、当局者は1月の会合を利用して、3月利下げを示唆する計画は一切示唆していない。とはいえ、経済的な変化に対応した動きが起こる可能性は否定できない。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は19日、利下げが近いと考えるのは「時期尚早」だと指摘。政策を緩和する前に、インフレ率が着実に2%へと戻る軌道にあるというさらなる証拠を目にする必要があると述べた。
サンフランシスコ連銀総裁、利下げが近いと考えるのは「時期尚早」
モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、エレン・ゼントナー氏は「FOMCは辛抱強くなれる」と話した。
パウエル議長らは、過去によくあったような景気縮小に対応するための利下げを実施する必要がないため、時間をかけることができる。その代わり、1年半前に数十年ぶりの高水準に達したインフレ率が驚くほど急低下したことに対応して、政策の調整を行うことになる。
ウォラーFRB理事は16日、「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと鈍化しつつあり、以前ほど急いだり迅速に利下げしたりする理由は見当たらない」と、ブルッキングズ研究所主催のオンラインイベントで語った。
ウォラーFRB理事、年内の利下げ可能-インフレ再燃なければ (3)
ウォラー理事の発言に加え、12月の小売売上高が予想を上回ったため、3月利下げの観測は後退した。19日のフェデラルファンド(FF)金利先物市場の動向から判断すれば、3月利下げの確率は半々よりやや低い。その1週間前、利下げ確率は4分の3程度だった。
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最悪の結果
FOMCが利下げに慎重であることは、歴史も証明している。1970年代、インフレが本格的に収束する前に緩和政策を打ち出した。これは、米国で最も偉大なセントラルバンカーと広く認識されているポール・ボルカー氏でさえ、景気が軟化した1980年に犯した過ちで、その後に方向転換し、米国をより深刻な景気後退に追い込むことになった。
アトランタ連銀のボスティック総裁は18日、当局が政策金利を引き下げ、その後にインフレ率が上昇した場合に再度利上げを余儀なくされることが最悪の結果だと発言。「そうしたアップダウンや行きつ戻りつのパターンを望まない」と語った。
ボスティック総裁、米利下げ開始7-9月期と予想-データ見極め (1)
元FRBのエコノミストで、現在はブルームバーグのコラムニストであるクラウディア・サーム氏は、このような考え方が利下げを5月まで先延ばしさせると分析した。しかし「インフレ状況が本当に良さそうなら、下半期に50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度の引き下げがあるかもしれない」と述べた。
26日には当局の物価目標である個人消費支出(PCE)価格指数の昨年12月の数値が発表される。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏はPCEコア価格指数が1カ月、3カ月、6カ月の年率換算で2%を下回ると予想している。
FOMC参加者は12月、中央値で2024年に75bpの利下げがあると予想した。
ボスティック氏は19日、FOXビジネスとのインタビューで、データ次第では利下げ時期に関する自身の見方を変えることにオープンだとしたが、緩和政策を実施する前にインフレが当局の2%目標に向かって「順調に」進んでいることを確認したいとの考えを示した。
ボスティック氏、利下げ時期の見方変えることに前向き-データ次第で
フォワードガイダンス
FOMCが1月の会合で下さなければならない決断の1つは、声明で今後の政策行動について示すガイダンスを変更するかどうかだ。12月の会合では追加利上げの可能性をわずかに残した。
それが今も当てはまるかどうかは不明だ。多くの当局者は、インフレ再加速のリスク、ひいては再利上げの可能性は低下したと考えている。しかし、利下げへの期待から債券および株式相場が上昇しているため、タカ派のメンバーはこのガイダンスを放棄したがらないかもしれない。
ダラス連銀のローガン総裁は6日、「ここ数カ月の金融状況の緩和を考慮すれば、追加利上げの可能性を排除すべきではない」と語っている。
米ダラス連銀総裁、当局はバランスシート圧縮ペースを減速する必要