概要:プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社やヘッジファンド会社は、自動車ローンや住宅ローン担保証券などへのエクスポージャーを自行のバランスシートから切り離そうと米国の銀行が発行する合成証券化商品の購入を準備している。
マン・グループやオークツリー、銀行の合成証券化商品購入を準備
銀行は新資本規制前にリスク切り離し模索-中小も商業不動産で打撃
プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社やヘッジファンド会社は、自動車ローンや住宅ローン担保証券などへのエクスポージャーを自行のバランスシートから切り離そうと米国の銀行が発行する合成証券化商品の購入を準備している。
金利上昇で米銀はこれらの債権の含み損が膨らみ、昨年7-9月(第3四半期)時点で未実現損失は6839億ドル(約101兆6000億円)に上った。中小の金融機関も商業用不動産で大きな打撃に直面している。商業用不動産に関連する債権は2028年末までに1兆5000億ドル近くが満期を迎える。
オークツリー・キャピタル・マネジメントのマネジングディレクター、ボブ・オレアリー氏は昨年12月のウェブキャストで「地方銀行も大手銀行も、バランスシート上に大きな損失を抱え込んでいる」と指摘。
「これらの損失はすぐに認識される必要はないかもしれないが、銀行のリスクを管理している人たちは、恐らくかなり居心地悪く感じているだろう。リスクを取り除こうとする公算が大きい」と語った。
資産運用会社にとって、クレジット・リスク・シェアリングのような取引は、手持ちの資金を活用し2桁台のリターンを生み出すチャンスになる。一方、銀行は顧客との関係を維持できる。規制当局からの圧力は銀行をリスク回避に追いやり、ある種の融資から手を引かせ、ファンドに参入と利益獲得の余地を与えている。
バーゼル3の新規則を控え米銀は昨年、合成証券化商品の一種であるクレジットリンク債の販売を復活させた。この債券にはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が使用され、発行体は実質的に信用リスクを投資家に移転することになる。
リスク移転のための銀行債復活、CDS組み込んだシンセティック商品
Banks Have $1.7 Trillion of CRE Loans Maturing Through 2028
Source: Trepp Inc., Federal Reserve. CRE lending numbers include multifamily.
マグネター・キャピタル、アレス・マネジメント、KKR、ブラックストーンなどがクレジットリンク債をこれまでに購入。ゴールデンツリー・アセット・マネジメントが昨年、107億ドルのマスターファンドで15%の利益を上げたのは、欧州の銀行による合成リスク移転商品を保有していたことも一因だと、事情に詳しい関係者が述べた。
世界最大の上場ヘッジファンド会社であるマン・グループも、銀行と提携しクオンツツールを使って各取引のリスクを分析することで、この分野に参入しようとしている。
同社の一任運用部門責任者、エリック・バール氏は昨年12月のインタビューで、「信用リスク移転の供給はかつてないほど増えている。これまで以上に、世界中の銀行がリスク移転の方法に注目している」と話した。