概要:トレーダーの間では欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁がインフレよりもユーロ圏が直面する経済的課題により重点を置いたとして、より大幅な利下げ観測が強まっている。
短期金融市場、6月までに0.5ポイント以上の利下げ織り込む
ドイツ国債相場上昇、2年債利回りは一時10bp低下
ラガルド総裁は2023年10-12月(第4四半期)にユーロ圏経済が停滞した可能性が高いと述べ、民間セクターの活動の弱さなど最近のデータは、成長を圧迫している強い逆風を浮き彫りにしたと指摘した。ECBの予測では、今年の失業率は上昇し、賃金上昇率は23年の5.3%から26年には3.3%へと徐々に鈍化する見通し。
ラガルド総裁は25日にフランクフルトで記者団に対し、利下げ開始時期は夏の「可能性が高い」とした先週のスイス・ダボスでの見解を堅持すると述べた。ECB当局者の多くも同様の見解を示しており、労働市場の動向を見極めるには1-3月(第1四半期)に行われる賃金交渉の行方を注視する必要があると指摘している。
トロント・ドミニオン銀行の欧州金利ストラテジスト、プージャ・クムラ氏は、ECB総裁の見解はダボスでの発言よりハト派的だったと述べ、「声明文でも記者会見でも、域内のインフレのトレンドにおける進展を認める部分が目立った」と分析した。
ドイツ国債はラガルド総裁発言を受けて上昇。金融政策に最も敏感な2年債利回りは一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し2.61%を付けた。市場が織り込む今年の利下げ幅は従来の約130bpから約143bpに拡大。5回の0.25ポイント利下げを完全に織り込み、6回目の利下げの可能性もほぼ70%見込んだことになる。
ピクテ・ウェルス・マネジメントのマクロ経済リサーチ責任者フレデリック・デュクロゼ氏は、「夏前に利下げが実施される可能性が高まった。6月までに0.25ポイント利下げが2回以上実施されるとの市場予想に対し、総裁はもっと強く反発することもできたはずだ。そうしなかったこと自体が重要なシグナルだ」と述べた。