概要:「高関税か円高か」――。 トランプ政権が仕掛ける圧力の中、日本経済は厳しい選択を迫られている。 24日、ワシントンD.C.で加藤勝信財務相と米財務長官ベッセント氏が会談し、為替と関税問題を巡る協議が行われた。 米国側から為替水準への直接的な要求はなかったものの、背後に漂う円高圧力の影は消えていない。 交渉の行方次第では、日本経済に大きな波が押し寄せる可能性もある。
キーワード:#ドル円#USDJPY
米ワシントンを訪問中の加藤勝信財務相は24日(現地時間)、ワシントンD.C.で米財務長官ベッセント氏と会談し、米国の関税措置に関連する為替問題について協議した。
会談後、加藤氏は記者団に対し、「米国側から為替水準や目標、管理枠組みなどへの言及は一切なかった」と説明。米国は円安是正に向けた具体的要求を行わなかったことを明らかにした。
両国は今後も緊密に協議を続ける方針で一致した。
一方で加藤氏は、米国の関税措置に対して「極めて遺憾」と強い懸念を表明。改めて是正を求めた。
会談は国際通貨基金(IMF)本部で約50分間行われた。加藤氏は、「為替レートは市場で決定されるべきであり、過度な変動は経済・金融の安定に悪影響を及ぼす」という基本認識を双方で再確認したと述べた。
トランプ政権は輸出拡大を目指す中、円安が米国製品に不利に働くことを問題視している。このため、米側が日本に対して是正要求を行うとの見方も出ていたが、今回の会談では具体的な要求はなかった。
なお、赤澤亮正経済再生担当相らによる16日の関税交渉では、為替レート問題は議題に上がっていない。為替問題は財務相間で協議する方針が改めて確認されている。
ベッセント長官も事前インタビューで「日本にはG7の合意、すなわち為替操作の回避を遵守してもらうことを期待する」と語っていた。
日本政府は「意図的な通貨切り下げ政策は取っていない」と強調。具体例として、昨年、急激な円安局面で総額15兆円規模の円買い・ドル売り介入を実施したことを挙げた。
さらにグローバル・タイムズによれば、日本の石破茂首相は先週、アメリカ政府との関税交渉に関して「大きな譲歩をするつもりはない」「合意を急ぐ考えもない」と発言している。
野村證券の4月23日付レポートによると、米国は関税交渉において、日本に対して「ドル安・円高の容認」を求め、それを関税引き下げの条件とする可能性があると指摘する。
トランプ大統領にとって、最大の目標は米国の貿易赤字削減だ。
この目標に向け、関税とドル安政策を同時に駆使しようとしている。
ただし、関税は市場暴落や世論の批判を招きやすい。一方、ドル安政策は短期的にはインフレや景気減速を引き起こさないため、トランプ政権はより積極的にこれを選ぶ可能性がある。
しかし、日本側にとっては急激な円高は大きな経済リスクとなる。野村證券の試算では、円高が進めば日本のGDPは2年以内に0.67%~1.41%減少する可能性があるという。
野村證券は、「関税と為替交渉の具体的なリンクは明示されていないものの、米国が為替問題をテコに日本に譲歩を迫るリスクがある」と分析する。
米国は過去にも、円高圧力を利用して日本に市場開放や輸入拡大を迫った歴史がある。
今回も同様のシナリオが想定される。
トランプ政権の戦略は明確だ。関税によって輸入品の価格を押し上げ、輸入を削減する一方、ドル安によって米国製品の国際競争力を高める。
この「二重作戦」により、貿易赤字の削減を目指している。
特にドル安政策は、当初は国内価格の上昇を招かず、世論の批判も受けにくいという利点がある。
米国製品の価格競争力が高まり、輸出拡大に直結するため、トランプ政権にとっては魅力的な選択肢だ。
ただし、ドル安には副作用もある。
市場が米ドルへの信認を失えば、資金流出や金融市場の不安定化を招くリスクがある。
1985年のプラザ合意後、急速なドル安が1987年のブラックマンデー(株式市場の大暴落)を引き起こした事例は、今も記憶に新しい。
トランプ大統領は「プラザ合意」にならい、新たに「マールアラーゴ合意(仮称)」を締結したいと考えている可能性がある。
プラザ合意では、米国と主要国がドル高是正に向けて協調介入を実施。結果としてドル安・円高が一気に進んだ。
ただ、現在の国際社会では、米国主導のドル安政策への協調には慎重な空気が漂う。
他国がドル売り介入に応じる可能性は高くないと見られている。
その中で、トランプ政権は日本にターゲットを絞る可能性がある。
関税引き下げと引き換えに、円高を受け入れさせようと圧力をかけるシナリオだ。
もし日本がドル売り・円買い協調介入に応じれば、円高が急速に進行し、日本経済には強烈な逆風が吹くことになる。
過去のプラザ合意でも、円高ショックは日本企業の競争力に打撃を与えた。
今回も同様に、米国に譲歩すれば日本経済の足元が揺らぎ、譲歩を拒めば関税引き上げリスクに直面するという、厳しいジレンマに立たされることになるだろう。
野村証券は、ドル安が米国の経済や貿易に与える影響を分析する際、通常、米国製品の国際市場での価格競争力を示す「ドルの実質実効為替レート(REER)」に注目できると指摘しています。簡単に言えば、REERの指数が高いほどドルは強くなり、それに伴い米国製品の価格も高くなって、国際市場での競争力が弱まることを意味します。
2025年3月時点の最新データによると、ドルの実質実効為替レート(REER)は109.5と、歴史的に見ても高水準にあり、1985年3月のプラザ合意前のピークである116.4と比べてもわずか5.9ポイント低いだけです。これは、現在のドルが依然として強く、米国製品の国際競争力が十分とは言えない状況を示しています。
プラザ合意締結後、ドルは急速に下落を始めました。ドル安を食い止めるため、各国は1987年2月に「ルーブル合意」を結び、米ドルの急落を防ぐべく協調して為替市場に介入しました。しかし、こうした努力にもかかわらずドル安は止まらず、ドルのREERは1988年12月には78.5にまで下落しました。
野村証券は、過去の経験から「一度ドル安のトレンドが形成され、勢いがつくと、たとえ各国が協調介入してもその流れを止めるのは難しい」と指摘しています。このため、為替市場に介入してレートを操作しようとする行為には、高いリスクが伴うと考えられています。
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