概要:オーストリアの大物実業家、レネ・ベンコ氏の不動産帝国の経営難に投資家が神経をとがらせている。
2023年11月24日 10:33 JST
シグナは今年分だけで債務履行のため約5億ユーロの資金調達に動く
十数の銀行や保険会社がシグナへのエクスポージャー保有するもよう
オーストリアの大物実業家、レネ・ベンコ氏の不動産帝国の経営難に投資家が神経をとがらせている。
スイスのウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)会社ジュリアス・ベア・グループは信用損失引当金の大幅な積み増しを20日に公表し、過去3年余りで最大の株価下落を記録した。ベンコ氏が創業したシグナ・グループに引当金が関係していると事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
債券保有者は同社と協議するためアドバイザーを起用し、一部株主は株式を売るオプションを行使したという。
不動産セクターが金利急上昇と新型コロナウイルス禍後のオフィス需要減少への対応を迫られる中で、ベンコ氏の肥大化した不動産グループは、欧州商業用不動産市場の混乱の中心ともいえる。シグナは今月に入り、手元資金が底を突きつつあり、事業再編専門のアドバイザーを選任したと明らかにした。
シグナは今年の分だけで金融債務の履行に必要な約5億ユーロ(約815億円)の新たな資金調達に動いている。潜在的投資家にとって、既に動揺する不動産業界のリスクが情報開示の不足でさらに増大する。
開示された情報や事情に詳しい関係者の証言、メディア報道に基づいてブルームバーグがまとめたところでは、ジュリアス・ベアのほか、オーストリアのライファイゼン・バンク・インターナショナル 、ヘッセン・テューリンゲン州立銀行(ヘラバ)を含むドイツの州立銀行など十数の銀行や保険会社がシグナへのエクスポージャーを保有するもようだ。
担保のレベルやグループ内のどの会社が取引相手かによって、リスクの度合いはさまざまだ。
サイモン・アダムソン氏を中心とするクレジットサイツのアナリストらは22日のリポートで、「(シグナに)エクスポージャーを持つ金融機関を探る状況だ。オーストリアとスイス、ドイツを中心に幾つかの銀行の関与が想定される」と説明した。
エクスポージャーを保有すると考えられる機関投資家のリストは次の通り。リストは全てを網羅しているわけではなく、顧客の守秘義務に関するポリシーを理由に機関投資家はおおむねコメントを控えている。