概要:11月に入り株高が際立っている。その主な犠牲者は投資家の慎重姿勢だ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が10月31日ー11月1日に開いた会合では、今後の政策金利の動向に関して「慎重に進む」戦略を取ることで政策当局者の見解が一致した。今月21日に公表された議事要旨で明らかになった。
FOMC議事要旨、「慎重に進む」戦略と追加利上げ巡り見解一致
JPモルガン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「ここで立ち止まって堅調なデータを見極めるという米金融当局の姿勢を受け、ソフトランディング(軟着陸)に対して楽観的な見方が広がるようになっている」としながらも、「ヘッジの乏しさはインフレに対する無頓着さや祈りに頼る状況を反映している」と話す。
S&P500種は週間ベースで1%上昇。4週連続のプラスとなった。ここ19営業日のうち下落して取引を終了したのは3日にとどまっている。11月の上げとしては、1928年以降で5回を除いて全てを上回る方向。ブルームバーグの60/40指数は今月だけで約7%上昇している。
ただ、全員が買っているわけではない。ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのマルチアセット担当シニアストラテジスト、マリヤ・ベイトメーン氏はリセッション(景気後退)リスクやサービス業を中心としたインフレ圧力をなお懸念している。
米ミシガン大学が発表した11月の消費者調査(確定値)では、1年先のインフレ期待が7カ月ぶりの水準に上昇。5-10年先のインフレ期待は2011年以来の高水準となった。
米消費者1年先インフレ期待、7カ月ぶり水準に上昇-ミシガン大
ベイトメーン氏は「現在の経済指標は積極的な政策正常化をなお正当化しておらず、金利をより高くより長くとどめる必要があり、リセッションにはその分陥りやすくなる。利益見通しが過度に高いことを意味しており、われわれは今回のラリーを支持していない」と語る。
みずほインターナショナルのグローバルマクロ戦略トレーディング責任者、ピーター・チャットウェル氏は、利下げが近づきつつあるかもしれないという事実は高まる市場心理を下支えする持続的な根拠にはならないと指摘。「米金融当局がリセッションを理由に利下げするなら、それが株式の支援材料になる可能性は極めて低い」とし、「株式相場はスイートスポットに入っているように見受けられ、この水準を維持するには大きな利益の伸びが必要になる」と述べた。