概要:スイスのプライベートバンク、ジュリアス・ベア・グループは、超富裕層顧客の一部に融資する事業を見直している。単一の融資先へのエクスポージャーが6億600万スイス・フラン(約1030億円)に上っていたことが判明したためだ。
2023年11月27日 21:50 JST
約1000億円に上る単一として部門最大のエクスポージャーが問題化
顧客はオーストリア実業家率いるシグナ、一部は24日に破産申請
レネ・ベンコ氏
だが、ブルームバーグはこれまでに、この顧客はオーストリアの大物実業家レネ・ベンコ氏が創業したシグナ・グループで、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)がエクスポージャーを調べていると報じた。
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ジュリアス・ベアはこのエクスポージャーに関連して11月前半に7000万フランを引き当てたと認め、必要に応じ一段の調整措置をとると説明した。先週には引き当てが予想以上に膨らんでいることが伝えられ、株価は過去3年余りで最大の下落を記録した。シグナの一部門は24日にベルリンの裁判所に破産を申請し、グループ救済の取り組みが頓挫しつつある兆しが見えた。
ジュリアス・ベアのフィリップ・リッケンバッハー最高経営責任者(CEO)は発表文で、「残念だが、単一のエクスポージャーが当社株主にとって最近不透明性を生んだ」と指摘。「取締役会ととともに、当社のプライベートデット事業とその執行の枠組みを検証する」と表明した。
問題化した融資はプライベートデット事業で単一として最大のエクスポージャーだという。同事業は超富裕層向けに合計15億ドルを仕組み金融の形で貸し付けており、自身の企業の株式やその他の投資によって資金が固定されていると考えられる顧客に対し、非公開の資産を担保に流動性を提供するサービスだった。ジュリアス・ベア全体の融資残高は410億フラン。