概要:欧州中央銀行(ECB)はまだ利下げを検討すべき段階にはないと、政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁が論じた。
政策引き締めのインフレに対する主な効果、これから広がる
ユーロ圏経済のハードランディング回避を「確信」-ナーゲル氏
ナーゲル独連銀総裁
ECBは利上げを完了した公算が大きく、12月の会合では2回連続で金利を据え置くとみられる。市場は既に来年4月の利下げを見込みつつあるが、複数の当局者は再利上げの可能性がまだあり、利下げを議論するのは早過ぎるとの見解を示している。
インフレ率は昨年のピーク時の10.6%から今年10月には2.9%まで低下したが、2%の目標まで最後の1マイルの達成には時間がかかり、ベース効果が今後数カ月の消費者物価上昇率を押し上げる見通しだと当局者らは強調している。
ナーゲル氏は「総合インフレ率はここ数カ月で大幅に低下したが、この低下が続くと当然視することはできない。エネルギー価格の下落によるディスインフレ効果は消滅し、目標水準からはまだかなり離れている。インフレ率は当面上下し、平たんでない道のりが続くと予想される」と語った。
一方、既に苦境にある経済には金融引き締めの影響が表れ始めている。本格的な影響はまだ出ていないが、最初の亀裂は見られる。ユーロ圏の域内総生産(GDP)は7-9月(第3四半期)に縮小し、悲観的な企業調査では景気後退の可能性が高まっている。
ナーゲル氏は「『ハードランディング』を回避できると私は確信している。逼迫(ひっぱく)した労働市場、企業と家計の低い債務水準、活発な投資活動は『ソフトランディング』の条件が整っていることを示唆している」と話した。