概要:ユーロ圏のインフレは予想以上に鈍化し、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%が視野に入った。ECBが当局者らの示唆よりも早く利下げに踏み切るとの見方を投資家は強めている。
エコノミスト全員の予想下回る、コアインフレは4カ月連続で低下
短期金融市場はECBの利下げ時期予想を前倒し、4月開始見込む
ユーロ圏のインフレは予想以上に鈍化し、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%が視野に入った。ECBが当局者らの示唆よりも早く利下げに踏み切るとの見方を投資家は強めている。
11月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.4%上昇と、前月の2.9%上昇から鈍化し、ブルームバーグが調査したエコノミスト全員の予想を下回った。物価上昇圧力はほぼ全てのカテゴリーで緩和が続き、CPI上昇率は2年ぶりの低水準となった。
燃料や食品など変動の大きい項目を除いたコアインフレ率は3.6%と、4カ月連続で低下した。
ECBの前例のない利上げを受け、インフレ率はユーロ圏全域でアナリスト予想を下回っている。同時に、生産活動も後退。7-9月(第3四半期)の域内総生産(GDP)は0.1%減少し、ユーロ圏はリセッション(景気後退)の瀬戸際に立たされている。
30日朝に発表されたフランスの指標はこの二つの傾向を顕著に示した。短期金融市場はECBの利下げ時期予想を前倒しし、来年4月までに0.25ポイントの利下げを完全に織り込んだ。
ECBは来年4月に利下げ開始、市場が初めて完全に織り込む (1)
それでもECB当局者は、インフレ率を2%に確実に戻すためには金融引き締めを続けなければならないと頑強に主張している。
ECBストゥルナラス氏、4月の利下げ期待はやや楽観的-ポリティコ
ECBの利下げ可能性、議論さえ時期尚早-ナーゲル独連銀総裁
実際、インフレ率は統計的効果や、エネルギー価格の高騰を相殺するために各国政府が昨年実施した措置の縮小により、目標値に戻る前に再び上昇する可能性が高い。ラガルドECB総裁は、今後数カ月にインフレが「若干」加速する可能性があると警告している。
また、1年余りの間に4.5ポイントの利上げを実施した急速な政策引き締めが、経済にどれだけの打撃を与えるかも不透明だ。これは金融セクターにはっきりと表れ、先月の企業向け融資は2015年以来の前年比減少を記録した。
一方で労働市場は持ちこたえており、30日に発表されたユーロ圏の10月の失業率は6.5%で前月から変わらなかった。