概要:米債券市場は今年、順調だったことがほとんどなかったが、11月は一転して記録的な月となっている。
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2023年11月30日 12:48 JST
利回り急低下で株式やクレジット、新興国市場の相場上昇に拍車
米金融当局による利下げが視野に、投資家は一段の上昇余地見込む
米債券市場は今年、順調だったことがほとんどなかったが、11月は一転して記録的な月となっている。
投資家は米国債とエージェンシー債、住宅ローン担保証券(MBS)の価格競り上げに躍起になり、今月の米債券のリターンは1980年代以来最高を記録。株式からクレジット、新興国市場まで、あらゆる資産の強力な相場上昇に火をつけた。利回り急上昇時に苦戦し投機的で極めて高リスクの資産である暗号資産(仮想通貨)でさえ大きく上昇した。
米国債市場で前例のない3年連続安に身構えていた債券投資家にとって、このラリーは心底必要なものだった。ブルームバーグ米アグリゲート指数の今月のリターンは29日時点でプラス4.9%に達した。米10年債利回りは4.26%と、0.65ポイント余り低下した。
この相場上昇が12月、そして2024年まで続くかどうかは、主な要因である経済とインフレの減速および、米金融当局の利上げ終了の兆しが今後も強まるかどうかにかかっている。11月の米債券市場には、雇用の伸び鈍化と消費者物価指数(CPI)の鈍化が追い風となり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長やウォラーFRB理事のハト派的発言が相場上昇に拍車をかけた。
ブリッジウォーター・アソシエーツの元チーフ投資ストラテジスト、レベッカ・パターソン氏は、「このところの経済指標で、ゴルディロックス的な景気減速という見方が裏付けられている。インフレ率は鈍化していると同時に、成長を過度に阻害してはいない」と分析した。
米国と世界経済のソフトランディング(軟着陸)の兆しと借り入れコストの急低下を受け、株価指標のMSCIワールド指数は今月8.9%上昇。新興国株は7.4%高となった。主要なデジタル通貨のパフォーマンスを測るブルームバーグ・ギャラクシー・クリプト指数は18%上昇した。クレジット市場では、米ジャンク債相場が4%強上昇し、22年7月以来の大幅高。
「乗り遅れることへの不安が多少ある」と話すコロンビア・スレッドニードル・インベストメントの金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「5%の米10年国債利回りは、一気に遠い記憶になった」と語った。