概要:個人投資家はここにきて、宴は長く続かないのではと懸念し始めている。
好調な株高の陰で拭えない暗転への不安、大型テク株頼りの構図警戒
10月は株式売り越し額が2年ぶり高水準-テクETFへの関心も低下
個人投資家はここにきて、宴は長く続かないのではと懸念し始めている。
株式市場が今年、昨年の下げをほぼ帳消しにするほどの快走をみせる中で、個人投資家の間では利益を確定し、リスクの高い取引を手じまう動きが出てきた。一握りのハイテク銘柄がけん引する株高の持続力に疑念を強めているためだ。
これは目下、プロ、アマ共通の懸念だ。 経済全般と同様に、株式市場もすこぶる好調だが、迫り来る逆風で事態が一気に暗転するのではとの不安はくすぶる。
カリフォルニア州ロスガトス在住のフルタイムトレーダー、デビッド・ヌーナンさん(45)も、不安を抱える1人だ。この1年、超大型ハイテク銘柄やS&P500種株価指数、ナスダック100指数といった主要指数のオプションを取引してきた。
だが、今では年末に期限を迎えるアップルの売り持ち以外は、ほぼすべて現金に換えた。
「現在の金利水準と、(大型ハイテク株7社で構成する)マグニフィセント・セブンに投資マネーが集中する状況をみて、そんな予感がする」と言うヌーナンさん。「誰かが売却して利益を確定し始めると、それが連鎖してドミノのような効果をもたらし得る。いったん利益確定に走ると、それがさらに売りを加速させる構図だ」と話す。
S&P500種は年初来19%近く、ナスダック100は約46%上昇しており、大手ハイテク企業に依存した、行き過ぎた株高との見方もある。直近の決算シーズンでは、アップルやメタ・プラットフォームズなどのテク大手が期待外れの収益見通しを示し、将来の成長性に対して懸念が高まった。これに加え、米政府による先端半導体の対中輸出規制も、ハイテク企業に打撃を与える恐れがある。言うまでもなく、米経済が来年、リセッション(景気後退)に陥る可能性もある。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、個人投資家は10月に160億ドル(約2兆3700億円)近く株式を売り越した。これは過去2年のどの月も上回る水準だ。ハイテク株に特化した上場投資信託(ETF)の一部についても、足元で関心が低下。ブルームバーグがまとめたデータによると、プロシェアーズ・ウルトラプロQQQ(TQQQ)からは今月およそ15億ドルが流出し、1月以来の大幅な資金引き揚げとなった。
米株から資金引き揚げ、2年ぶり高水準-株高後押してきた個人投資家
アシュトン・ジョーンズさん
一方、フロリダ州ジャクソンビル在住のアシュトン・ジョーンズさん(34)は、年末にかけて「サンタクロース・ラリー」で相場はなお上昇すると考えている。保険会社で金融アナリストとして働くジョーンズさんは余暇に投資を行っており、通常は日中にオプション取引を行い、午後4時までに持ち高を決済するという。
だが、ジョーンズさんは来年1月には下落すると見込んだ戦略を描いている。具体的には市場をショートし、リスクから手を引くつもりだ。
「相場が重力に逆らってこれだけ値上がりすれば、揺り戻しがあるはずだ」とし、「季節要因だけに基づいても、利益確定の売りが出るだろう」とジョーンズさんはみている。