概要:米連邦準備制度は金利に関するメッセージの力を失いつつあるが、金融市場が利下げが近いと期待するのは間違っていると、アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏が述べた。
2023年12月5日 22:15 JST
フォワードガイダンスの信頼性回復必要、最近の市場で政策が弱体化
市場が見込む来年の利下げ、正当化されるとは思わない
米連邦準備制度は金利に関するメッセージの力を失いつつあるが、金融市場が利下げが近いと期待するのは間違っていると、アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏が述べた。
ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるエラリアン氏は、金融当局は2%のインフレ目標を達成するため経済をリセッション(景気後退)に陥れる代わりに、目標値よりも高いインフレを恐らく容認するだろうと発言。投資家は急激な利下げを織り込んで過剰に反応しているとも指摘した。
インフレ率低下の兆しが見え、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がこれまでの措置で政策は「景気抑制的な領域に深く入った」と発言する中、トレーダーは利下げを見込み、ここ数日の相場は大きく変動している。
エラリアン氏は5日のブルームバーグラジオの番組で、米連邦準備制度は市場に対するフォワードガイダンスの信頼性を回復する必要があり、そうしなければ最近の「金融環境の大幅な緩和」が政策を弱体化させると警告した。
「私は連邦準備制度が利上げを終えたと考えているが、来年の利下げについて市場で言われていることが正当化されるとは思わない。当局にはまだ重大なコミュニケーションの問題があり、信頼性の問題もある」と語った。
「フォワードガイダンスの意味は、市場に耳を傾けてもらい、市場に当局に代わって難しい仕事をさせることだ。しかし今月1日に見られたように、フォワードガイダンスは市場から完全に無視されている」と指摘した。
「市場は基本的に、『当局が金利についてどう考えているかは気にしない。全く違うことをすると思うからだ』と言っている。これはひどいメッセージだ」と話した。
エラリアン氏は、当局は政策を緩和する前に労働市場にもっと軟化の兆しを見たいだろうし、サービス部門のインフレが続いているのは問題だと語った。
労働市場やサプライチェーンの柔軟性が低下し、「別世界」となった現在、金融当局はその役割について「より謙虚に」なる必要があるとも論じた。
当局は今インフレに積極的に取り組むのではなく、「将来の2%を約束し続けながら、それよりも高水準のインフレを容認すべきだろう。つまり、非常に迅速に2%に戻そうとはしない方がよい」と語った。
新型コロナウイルス流行後の労働市場とサプライチェーンの変化によって、3%のインフレ目標が望ましくなったかもしれないが、当局は「自分たちの信頼性を損ないたくないので、2%の目標を修正することはないだろう」とも述べた。
「最終的に当局が直面する選択は、2%に固執して景気を後退させるリスクを負うか、インフレ率が多少高くても容認し、景気を後退に追い込まず、それが安定的で、インフレ期待が管理不能にならないことを見いだすかだ。私は彼らが後者を選ぶことを望む」と続けた。