概要:欧州中央銀行(ECB)当局者が、インフレ率を目標に戻すために十分な引き締めを行ったとの見方を示す中で、トレーダーは2024年の利下げ幅の予想を拡大させている。
利下げが第1四半期に始まる確率は約80%とみられている
タカ派とされるシュナーベル理事も追加利上げの可能性低いとの見方
政策委員会メンバーのカザークス・ラトビア中銀総裁は、「24年上期に利下げする必要はない」が、「物価安定のリスクバランスが変化すれば」政策判断は変わる可能性があると発言した。エコノストリーム・メディアが6日、同総裁のプレゼンテーションを引用した。
ECB、現時点で2024年上期の利下げ必要ない-ラトビア中銀総裁
中道派とされるビルロワドガロー・フランス中銀総裁は先週、「何らかの衝撃が起きない限り、利上げはもはや完了した」と述べ、24年のある時点で利下げの問題を検証することになるだろうとの見通しを示した。
ECB、2024年に利下げの問題を検討する可能性-仏中銀総裁
ユーロ圏のインフレ率はここ数カ月に急速に低下し、3カ月連続で予想中央値を下回った。11月の2.4%は21年半ば以降のどの時点よりもECBの目標である2%に近づいている。
同時に、経済データはさらなる弱さの兆候を示している。ドイツの10月製造業受注は予想外に減少し、欧州随一の経済大国の製造業が依然として低迷していることを浮き彫りにした。
トレーダーの見込みが正しければ、ECBは来年、主要中央銀行の中で最初に利下げを実施し、最も積極的な緩和サイクルを実行するだろう。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局は5月に利下げを開始し、政策金利を計1.25ポイント引き下げると予想されている。イングランド銀行(英中銀)は4月を皮切りに、0.25ポイントの利下げを3回実施し、4回目実施の可能性は40%と予想されている。1カ月前には、織り込まれていた利下げの回数は2回だけだった。
オーストラリアの金利市場は、豪準備銀行(中銀)が2024年半ばまでにあと1回利上げするとの見方から、同時期までに75%余りの確率で利下げするという予想に転換。先週、追加利上げが来年必要になる可能性を示したニュージーランド準備銀行(同)でさえ、今では5月までに利下げに踏み切る公算が大きいとみられている。
世界の金融緩和サイクル、ECBが先陣か-来年早々号砲との観測拡大
ECBをはじめとする主要中銀が来年、自国経済を支えるために金融緩和を実施せざるを得ないとの見方が債券相場を押し上げている。ドイツ10年債利回りは過去2カ月で約80ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、2.23%と5月以来の低水準になっている。
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