概要:過去2年にわたり損失続きの債券投資を巡り、老後の備えとして債券に依存することが果たして良い戦略なのかとの疑問が生じても無理はないだろう。
国内・外国株の組み合わせ、株6割・債券4割をアウトパフォーム
金融アドバイザー、債券は投資家に心の安らぎを与えると指摘
過去2年にわたり損失続きの債券投資を巡り、老後の備えとして債券に依存することが果たして良い戦略なのかとの疑問が生じても無理はないだろう。
こうした疑問を裏付ける研究論文がこのほど明らかになった。
これはウォール街の反発を招くこと間違いなしの、コンセンサスから大きく外れた見解だ。論文では、将来への備えを蓄える上で最善の手法とされる株式6割・債券4割の「60/40」ポートフォリオという従来の投資アドバイスについて、30余りの国・地域を対象に130年にわたる期間について検証。その結果、国内株式と外国株式の半々で組み合わせて運用した方が、株と債券の分散ポートフォリオよりも運用成績が良いことが分かった。
論文の共同筆者の1人、アリゾナ大学のスコット・セダーバーグ氏は「株式投資家が耐えられる限り、債券に分散投資することで短期的な動きをならそうとする投資家よりも、非常に高い確率で一段と大きな利益を得ることができる」と指摘する。
コンピューターを使って米国の家計を対象に100万回のシミュレーションを行ったところ、国内株式と海外株式に資金を振り分けた場合、退職までに平均100万ドル(約1億4500万円)余りの資産が形成されたのに対し、60/40の場合は76万ドルにとどまった。株式のみのポートフォリオの場合、損失が生じた場合のマイナス幅はより大きかったが、長期のパフォーマンスを損ねるほどではなかったという。
老後の備えに向けた投資で債券を完全に避けるべきだというのは、かなり極端な主張に聞こえるだろう。多くの米国民にとって債券は老後資金として極めて重要な部分を占めており、こうした長年にわたり広く浸透してきた慣行に逆行することになるためだ。
メリルおよびバンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンクのチーフ・インベストメント・オフィスでマーケット戦略の責任者を務めるジョー・クインラン氏によると、債券の重要性は値上がりの見込みだけでなく、安定性にもある。パフォーマンスにばらつきがあり不安定な株式とは異なり、債券の安定的で予測可能なリターンは、人々に金融資産をコントロールしているという感覚を与える。顧客の多くは夜中に安心して眠るためなら、潜在的な利益をあきらめることもいとわない、とクインラン氏は述べた。