概要:オーストラリア最大の年金基金、オーストラリアンスーパーは、急成長するプライベートクレジット市場へのエクスポージャーを増やしている。銀行のバランスシート縮小や規制強化の中で収益の向上を目指す。
オーストラリア最大の年金基金、オーストラリアンスーパーは、急成長するプライベートクレジット市場へのエクスポージャーを増やしている。銀行のバランスシート縮小や規制強化の中で収益の向上を目指す。
3000億豪ドル(約28兆6000億円)を超える資産を運用するオーストラリアンスーパーは、プライベートクレジット・スペシャリストのチャーチル・アセット・マネジメントへの投資委託を従来の2億5000万ドルから15億ドル(約2200億円)に拡大した。
同基金のプライベートクレジット責任者ニック・ウォード氏は「プライベート市場の観点からすると、プライベートクレジットはインフラや不動産に勝ると考えている」と、12日のインタビューでニューヨークから語った。 「よりリスクの高い投資環境を考慮して、マージンは拡大している」と指摘。チャーチルは通常、米国のミドルマーケット企業向けシニアローンに注力しており、利回りは11-12%程度だと付け加えた。
オーストラリアンスーパーは、世界全体でプライベートクレジット市場に45億ドル以上投資しており、今後数年間でエクスポージャーは3倍になると見込んでいる。2008年の金融危機以降、銀行によるリスクの高い融資に対して当局が規制を強化したことを受けて同市場は1兆6000億ドル規模に成長し、今回の件はあらためて市場の関心の高まりを浮き彫りにしている。
ミドルマーケット企業
チャーチルのケン・ケンセル社長兼最高経営責任者(CEO)は、ミドルマーケット企業向け融資に成長余地があるとみる。同氏の定義によれば、ミドルマーケット企業は信用格付けが「B+」から「BB-」で、キャッシュフローが2500万-1億ドル程度の借り手を指す。
同氏は、「これらは十分な事業規模を持つとともに、業界をリードする企業」だとし、「伝統的なミドルマーケットのリスク調整後のリターンは最も魅力的だと考えている」と述べた。
プライベートクレジット市場を巡っては透明性と規制の欠如が懸念材料となっており、11月にはUBSグループのコルム・ケレハー会長や、パシフィック・インベストメント・マネジメント(ピムコ)の幹部らが増大するリスクについて警鐘を鳴らした。
ただ、 ケンセル氏は「どのような形であれバブルの兆候は見られない上、バブルに近づいている兆しもない」として、こうした見解に異議を唱えている。 各融資の実績とリスク評価について言及し、「当社は四半期ごとに投資家に非常に詳細な報告を行っている」と付け加えた。