概要:米ボストン大学4年生のマイケル・ラーマニさんの成績は優秀で、課外活動やインターンシップなどの実績も十分だ。それでも就職活動は難航しており、2024年の卒業を控え週15社ほど応募している。
テクや金融、コンサルなど野心的学生が志望する大手企業は採用絞る
自分の基準に達しない仕事に甘んじるよりまし、大学院に進む学生も
米ボストン大学4年生のマイケル・ラーマニさんの成績は優秀で、課外活動やインターンシップなどの実績も十分だ。それでも就職活動は難航しており、2024年の卒業を控え週15社ほど応募している。
米国ではほんの数年前までは、就職を希望する学生側が複数の内定を背景に報酬条件のアップを引き出せた。
だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響に伴う採用が一服。野心的な学生が志望する就職先であるテクノロジーや金融、コンサルティングなど大手企業は、コスト削減と人員調整の真っただ中だ。
ラーマニさんは昨夏インターンをしていた米コンピューターメーカーのHPから正社員のオファーを受けたが、テキサス州ヒューストンに転居したくないとの理由で断った。
不透明な経済環境と高金利に対応する企業が新規採用を控える中で、ブルームバーグ・ニュースのインタビューに答えた大学4年生らが直面しているのは、ホワイトカラー就職市場の厳しさだ。
「昨年のインターンシップで感じた見通しと今年の正規雇用関する自分の見通しには少し差異が生じている」と財務と経営分析を専攻するラーマニさんは打ち明けた。
新卒者の就職難はテクノロジーや金融業界における人員削減によって5月から表面化し始め、悪化しつつある。レイオフが増える一方で、離職する社員は少なく、新規採用の余地が小さくなっている。
大学のキャリアセンターによると、フルタイム職の採用は不気味なほど静かだ。内定を得られないインターンも増え、入社日が延期されたり、場合によっては採用を取り消されたりもしている。世界的金融危機のさなかに卒業したミシガン大学の卒業生が最近、在校生に話をするよう頼まれたほどだ。
確かに、インフレ抑制を目指した米連邦準備制度による積極的な利上げにもかかわらず、労働市場全体では底堅さが示されており、ヘルスケア部門などはより多くの雇用を創出している。
だがその一方で、テクノロジーや金融サービスなど比較的賃金の高い業種では雇用が伸び悩んでいる。リンクトインのデータによれば、両セクターの雇用は11月に前年同月比で20%余り減った。
厳しい現実
さらに、今年初めの大量レイオフが競争を激化させている。リンクトインによると、22年には応募者1人に対して求人1件があった。今は、求人1件に対し2人の応募者だ。
リンクトインのシニアエコノミスト、コリー・カンテンガ氏は「どんな職があるかが問題だ」と述べ、多くの若いプロフェッショナルが自分のスキルに合ったポジションを見つけられるか不安を抱いていると指摘した。
多くの学生は今年夏、一流企業でインターンシップをしても正社員になれることが確約されるわけではないことに気付き始めた。
一例を挙げると、米アップルのマネジャーはインターンに対し、10月中に正社員登用に関する最新情報を伝えると説明していた。だが、何の連絡もないまま10月が過ぎた。多くのインターンは連絡を絶たれたと感じ、採用シーズン後半に面接に奔走することになったと、この件に詳しい関係者は語った。
ペンシルベニア大学ウォートン校のピーター・キャペリ教授(経営学)は、「雇用主が規模縮小を望む場合、最も簡単な方法は雇用を凍結することだ。すでに仕事を持っているほとんどの従業員にとってはそれほど問題ではないが、その影響は主に新規雇用に向かう」と語る。
オハイオ州にあるマイアミ大学4年生、ニコール・ジュラドさん(21)は、今秋のコンサルティング会社での職探しは「惨事」だったと語った。26件もの求人に応募し、デロイトの面接ではいいところまで進んだものの、結局、就職が決まらないま学期を終えた。
ジュラドさんは昨年、ヤンセン・ファーマシューティカルズを含め4つのインターンシップのオファーを受けていたこともあり、ショックだった。しかし、大学院に進むという代替案もある。「自分の基準に達しない」仕事に就くよりはましだと考えている。
金融危機時の08年のようだということはないだろうが、現在の就職市場は、自分は全てを完璧にこなしてきたと思っている学生にとって厳しい現実を突き付ける。
就職が決まった学生も妥協を強いられたと感じているケースもある。米ベイン・アンド・カンパニーなどのコンサルティング会社に内定した24年度卒業者の中には入社が数カ月遅れとなる新卒予定者もいる。
こうした不吉な兆候にもかかわらず、ジュラドさんら多くの学生は自身が夢見る職に就くことを望んでいる。「自分の願いと自分に何がふさわしいかは分かっている。朝起きて仕事に行くのが幸せだと言えるようになりたい」と話した。