概要:19日の米株式相場は続伸。この日も米金融当局者が利下げに対する市場の期待を抑える発言を行ったが、相場の上昇基調は維持された。
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2023年12月20日 6:37 JST
日銀決定会合後の円相場、下落基調-欧州時間帯には一時144円96銭
NY原油先物は続伸、約2週間ぶりの高値-紅海通航回避の動き拡大
19日の米株式相場は続伸。この日も米金融当局者が利下げに対する市場の期待を抑える発言を行ったが、相場の上昇基調は維持された。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4768.37 | 27.81 | 0.59% |
ダウ工業株30種平均 | 37557.92 | 251.90 | 0.68% |
ナスダック総合指数 | 15003.22 | 98.03 | 0.66% |
ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は、またも最高値を更新した。S&P500種株価指数も急ピッチで最高値に接近している。
アトランタ連銀のボスティック総裁は、2024年の利下げは2回にとどまるとの見通しを示した。少なくとも5回を見込む市場に比べてかなり少ないが、市場に漂う楽観論にはほとんど影響を与えなかった。
アトランタ連銀総裁、来年早期に利下げする緊急性は想定していない
この日発表された11月の米住宅着工件数は大幅に増加。中古物件の限定的な供給が、建設業者に引き続き恩恵を及ぼしている。
米住宅着工が予想外に急増、6カ月ぶり高水準-中古物件の不足が支援
BMOキャピタル・マーケッツのストラテジスト、イアン・リンジェン氏は「全般的に住宅部門のデータは堅調で、ソフトランディングのシナリオを補強している」とリポートで指摘した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によると、米利下げ期待が株高を後押しし、投資家は2022年初め以降で最も楽観的な見方をしている。
米利下げ期待で株への投資殺到に拍車、円は過小評価-BofA調査
リッチモンド連銀のバーキン総裁は、インフレに関して最近の進展が続けば、米金融当局が利下げに踏み切ることを示唆した。18日にはシカゴ連銀のグールズビー総裁とクリーブランド連銀のメスター総裁が市場の先走りをけん制していた。
リッチモンド連銀総裁、インフレ鈍化続けばFRBは利下げ実施と示唆
英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ学長のモハメド・エラリアン氏は、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に見られた債券急騰について、FOMCがコミュニケーションで問題を抱えていることを示す重大な証左であるとの見解を示した。「FOMCのコミュニケーションは人々を困惑させている。これはかなり問題だと考える」とブルームバーグテレビジョンで語った。
FOMCのコミュニケーション、「かなり」問題がある-エラリアン氏
米国債
米国債相場は、ほぼ前日の水準近辺での推移。午前の取引では、ドイツ国債が全年限で上昇したことが米国債相場の支えとなった。米住宅着工件数の力強い伸びが示された後は、米国債先物が上げ幅を幾分削った。午後は薄商いの中で相場の動きも限られた。20日には米20年債入札が予定されている。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.04% | -0.7 | -0.17% |
米10年債利回り | 3.93% | -0.2 | -0.05% |
米2年債利回り | 4.44% | -0.5 | -0.11% |
米東部時間 | 16時29分 |
10年債利回りは3.93%近辺に低下。一時は3.89%まで下げた。金融政策の影響を受けやすい2年債の利回りは4.44%付近。
エバコアISIの創業者であるエド・ハイマン会長は「現在と同様に、米国債利回り曲線の逆イールドは2007年後半に一段と拡大した」とし、「金融危機に伴う大不況はその3カ月後に始まった」と顧客向けリポートに記した。逆イールドは景気後退の可能性を示唆する指標として注目されている。
アトランタ連銀とリッチモンド連銀各総裁の発言に対し、米国債相場はほとんど反応しなかった。
外為
外国為替市場でドルは円を除く全ての主要通貨に対して下落。米国などで来年に利下げが行われるとの見方からリスクテーク意欲が高まったことが背景にある。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1223.08 | -3.81 | -0.31% |
ドル/円 | ¥143.86 | ¥1.08 | 0.76% |
ユーロ/ドル | $1.0978 | $0.0054 | 0.49% |
米東部時間 | 16時30分 |
円は欧州時間に対ドルで一時1.5%安の1ドル=144円96銭まで売られたが、その後は徐々に値を戻し、143円台半ば近辺を付ける場面もあった。円はユーロに対しても下落し、同じく欧州時間に一時1.7%安となった。
日本銀行は金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(YCC)を軸とした大規模緩和の維持を決定。植田和男総裁は金融緩和からの出口対応に関して、「確度の高い姿を示すことは現在は困難」との認識を示した。
植田日銀総裁、出口までの距離明確にせず-大規模緩和を維持 (2)
ラボバンクの為替戦略責任者ジェーン・フォリー氏は円相場の反応について、「植田総裁は具体的な出口政策に向けた準備作業を示さなかった。明らかに市場に若干の失望があることを示している」と述べた。
野村証券の松沢中チーフストラテジストは「一部の市場参加者は19日の政策変更に備えたポジションを取っており、そのカバーが必要だった可能性がある」と分析した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続伸。約2週間ぶりの高値を付けた。主要貿易ルートである紅海を通航する船舶への攻撃が増える中、同海域を回避する企業が増えており、買いが続いた。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物の中心限月である2月限は1.5%上昇し、1バレル=74ドル近くで終えた。英石油大手BPとノルウェーの石油大手エクイノールは紅海での全ての運航を停止すると発表。親イラン武装組織フーシ派による攻撃が最近激化しており、先週に5カ月ぶり安値まで低迷していた原油価格の回復基調が強まっている。
現在の上昇局面にもかかわらず、一部のトレーダーは原油価格への長期的な影響を予想しておらず、需給の重要なバロメーターであるタイムスプレッドは引き続き弱さを示している。WTIの1月限と2月限の差であるプロンプトスプレッドは、50セントの順ざやで終了。足元では十分な供給を確保していることがうかがえる。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比11.60ドル(0.6%)高の1オンス=2052.10ドルで取引を終えた。金スポット価格はニューヨーク時間午後2時35分現在、0.6%高の2039.54ドル。