概要:イーロン・マスク氏が米金融市場の現状に怒りをあらわにした。
「本当に必要でない限り」企業の株式公開は勧めない-マスク氏
市場に占めるパッシブ投資の割合、現時点では単純に大き過ぎる
イーロン・マスク氏が米金融市場の現状に怒りをあらわにした。
アーク・インベストメント・マネジメントを率いるキャシー・ウッド氏との21日の対談で、マスク氏は上場企業が直面する大きな規制負担や効率性を制限する株主からの圧力に加え、パッシブ投資がいかにボラティリティーをあおっているかを嘆いた。
数多くのベンチャー企業を始めたマスク氏はこれまでも、公開市場を利用することで失うものがあるという「トレードオフ」について、長年にわたって問題を提起してきた。
マスク氏は米証券取引法の厳格さを軽んじたとされ、最高経営責任者(CEO)を務めるテスラに関するツイッター(当時)への投稿を巡り規制当局と対立したこともある。マスクはまた、世界で最も評価額の大きい非公開企業の1社であるスペースXのCEOも務める。
マスク氏は自らツイッターを買収し、名称をXに変更。Xでライブ配信されたウッド氏とのやり取りの中で、「上場企業には悪い四半期を過ごしてはならないという大きなプレッシャーがかかる。そのため、四半期末に人々を失望させないために多大な労力を費やすような、効率の悪い経営になりかねない」とマスク氏は語った。
「投資家と企業の長期的ビジョンは、時間軸が一致しない」という。
マスク氏はスペースXについて、非公開企業であることでテスラと比較してより適切なリスクを取ることも可能になったと説明。一方で、テスラを株式公開したことのメリットの一つは資本にアクセスできるようになったことだと話した。
マスク氏はその上でウッド氏に対し、「本当に必要でない限り」企業の株式公開は勧めないと語った。
ツイッターの上場を廃止したマスク氏は、一般投資家からの圧力を受けずに同社を大きく変えた。ツイッターの共同創業者ジャック・ドーシー氏は以前から事業の苦戦には一般投資家の影響があると主張し、運営を立て直すため上場を廃止するようマスク氏に勧めていた。
マスク、ウッド両氏はまた、パッシブ投資がいかに主要なインデックスに採用されていない銘柄を不利にし、ベンチマークとなる指数に含まれる企業に不公平な報酬を与えているかについても論じた。学会でもパッシブ投資ブームが株価をゆがめ、市場の極端な値動きを引き起こしているとの批判が出ている。
マスク氏は、2019年に亡くなったバンガード・グループ創業者ジャック・ボーグル氏がパッシブ投資を金融の主流にしたことを称賛する一方で、こうした資金運用のトレンドは「行き過ぎた」と述べた。
「市場に占めるパッシブ投資の割合は、現時点では単純に大き過ぎる。結局のところ、誰かが能動的な決断をしなければならない。受動的な投資家は、能動的な投資家の決断に乗っかっている」とマスク氏は指摘。「4、5人のアクティブな大物投資家の決断に基づいて、株価は本質的に大きく動く」と語った。
ブルームバーグ・インテリジェンスの分析によると、ウッド氏の旗艦上場投資信託(ETF)「アーク・イノベーションETF」(銘柄コードARKK)はアクティブ運用で、S&P500種株価指数構成銘柄との重複はほとんどない。
ウッド氏は以前からマスク氏を支持。テスラは現在、アーク・イノベーションETFで第2位の保有銘柄だ。