概要:21日の米株式相場は反発。翌日に発表される11月の米個人消費支出(PCE)価格指数で、インフレが金融当局の目標に近づいていることが示されるとの見方がある。
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2023年12月22日 6:39 JST
22日のPCE価格指数で物価目標に近づいたこと示唆されるとの見方
ナスダック100指数は1.2%高、10年債利回りは一時3.90%に上昇
21日の米株式相場は反発。翌日に発表される11月の米個人消費支出(PCE)価格指数で、インフレが金融当局の目標に近づいていることが示されるとの見方がある。
米PCEインフレ統計、FRBの闘いがほぼ終了したこと示す見通し
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4746.75 | 48.40 | 1.03% |
ダウ工業株30種平均 | 37404.35 | 322.35 | 0.87% |
ナスダック総合指数 | 14963.87 | 185.93 | 1.26% |
ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は1.2%高で終了した。
「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は11月以降で初めて一時、14を上回った。
11月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の統計は、米金融当局が重視するPCE価格指数で測った過去6カ月の物価上昇率が、年率ベースで目標の2%に戻った可能性が高いことを示唆した。
ただ、ブルームバーグ・エコノミクスは、堅調な所得や支出の伸びを予想した上で、それらがディスインフレの持続性に疑問を投げ掛けるなどと指摘。PCE価格指数が金融当局の方向転換を裏付けるかどうかに関して慎重な見方を示した。
前日の米国株は午後に急落したが、一部の市場関係者はゼロ・デー・オプション(ゼロDTE=ゼロ・デー・トゥー・エクスピレーション)と呼ばれる24時間以内に期限が切れるプットオプションの大規模な取引が下げを加速させたとみている。一方、インフレ鈍化と利下げ期待という大きな流れの前では、そうしたスピード調整は長くは続かないと、市場関係の多くは指摘する。
シティグループのストラテジストらは押し目買いを助言。「この先ボラティリティーの高い展開が予想されるが、最終的には米金融当局の方向転換が指針になるはずだ」と付け加えた。
BMOキャピタル・マーケッツのストラテジスト、イアン・リンジェン氏は「年末が近づく中、引き続き値固めが市場にとって最も重要な誘因だ」とリポートに記した。
7-9月(第3四半期)の米経済成長率は、前期比年率4.9%に下方修正され、エコノミスト予想も下回った。先週の米新規失業保険申請件数は予想ほど増加せず、歴史的な低水準付近にとどまった。
米GDP、7-9月は4.9%増に下方修正-消費とインフレも低下 (1)
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏はこれらの指標について「景気減速を背景に、そう遠くない将来に米国は利下げをする方向にあるというシナリオに引き続き沿った内容」と指摘。「善しあしは別として、そうしたセンチメントが最近の相場上昇で大きな役割を演じている。期待を抑えようと米金融当局が最善を尽くしているにもかかわらずだ」と述べた。
米国債
米国債相場は反落(利回り上昇)。米GDP確定値が改定値から下方修正されたことを受けて相場は一時上昇したものの勢いは続かず、午後の取引では軟調に推移した。売買はこの日も平均を大きく下回った。
年限が長めの国債の方が下げが大きく、前日に続いてスティープ化の動きが見られた。米5年物物価連動国債(TIPS)入札に対する反応はほとんどなかった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.03% | 4.6 | 1.14% |
米10年債利回り | 3.89% | 4.3 | 1.11% |
米2年債利回り | 4.35% | 1.8 | 0.42% |
米東部時間 | 16時36分 |
10年債利回りは一時3.90%に上昇。それでも、同利回りは今月に入ってからの低下幅が約50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に上る。
金利スワップ市場では米GDPや新規失業保険申請件数の発表後、米金融当局は来年末までに0.25ポイントの利下げを少なくとも6回行うとの見方が織り込まれた。連邦公開市場委員会(FOMC)が先週公表した予測で、当局者の利下げ回数見通しは3回にとどまる。
外為
外国為替市場ではドル指数が反落。米GDP発表後に8月以来の安値を付けた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1219.35 | -7.37 | -0.60% |
ドル/円 | ¥142.22 | -¥1.35 | -0.94% |
ユーロ/ドル | $1.1007 | $0.0065 | 0.59% |
米東部時間 | 16時36分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.6%下げ、下値支持線である1220を割り込んだ。ドルは他の主要10通貨全てに対して下落。流動性は低く、四半期末の接近に伴う資金フローが見られた。
円はドルに対して一時1.1%上昇し、1ドル=142円05銭を付けた。200日移動平均線の142円71銭を突破した。
内閣府は21日公表した2024年度の政府経済見通しで、消費者物価指数(総合CPI)の前年度比上昇率を2.5%と、前回の1.9%から上方修正した。
24年度に所得が物価上回る見通し、減税で脱デフレ視野-政府試算 (1)
原油
ニューヨーク原油先物相場は小反落。紅海での船舶攻撃のリスクが相場を下支えしたものの、石油輸出国機構(OPEC)の混乱や米国の原油生産増加で売りが優勢になった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は4日ぶりに下げ、1バレル=74ドルを下回って終えた。アンゴラがOPEC脱退を発表するとセンチメントが悪化した。アンゴラ脱退によってOPEC加盟国は12カ国に減少する。
アンゴラ、OPEC脱退-原油生産枠に反発し16年の連盟見限る
米エネルギー省のデータによると、米国の原油生産は先週、日量1330万バレルと過去最高を記録。供給は十分にあるとトレーダーの間では引き続きみられている。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、紅海で船舶を狙った攻撃を今後も続けると言明。米国がフーシ派の拠点に対する軍事攻撃を選択した場合には報復も辞さないと警告した。
フーシ派、船舶への攻撃継続を言明-イエメンに攻撃なら米軍艦も標的
世界貿易の12%近くが紅海ルートを利用しており、100隻余りのコンテナ船が同ルートからアフリカ南端の喜望峰経由に変更している。米政府はフーシ派に対する軍事行動を検討しているが、外交的解決を望んでおり、西側やアラブの同盟国と協力して海上保護部隊を強化している。
PVMオイル・アソシエーツのアナリスト、タマス・バルガ氏は「多国籍部隊が実際に配備されるまで、紅海を巡る情勢は石油関係者に大きな影響を与え続けるだろう」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は前日比33セント(0.4%)安の1バレル=73.89ドルで終了した。ロンドンICEの北海ブレント2月限は31セント安の79.39ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。米GDPの下方修正を受けて来年の利下げ観測が強まり、ドルが下げたことから金に買いが入った。
金スポット価格は今月初めに1オンス=2135.39ドルまで上昇し、過去最高値を更新した後、2040ドル前後で値固めとなっている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比3.60ドル(0.2%)高の1オンス=2051.30ドルで取引を終えた。金スポット価格はニューヨーク時間午後3時18分現在、0.6%高の2043.74ドル。