概要:27日の米国株式相場は小幅続伸。S&P500種株価指数が最高値に近づく中で、買い疲れの兆候が見えている。
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2023年12月28日 6:56 JST
5年債入札に旺盛な需要、債券利回りは全般的に低下
ドル軟調、米国債利回り低下や年末を控えたポートフォリオ調整で
S&P500種株価指数と50日移動平均、100日移動平均、200日移動平均
出所:ブルームバーグ
この日は580億ドルの米5年債入札が旺盛な需要を集めたことを受けて国債利回りが急低下。前日実施された米2年債入札も、米利下げ開始前に高い利回りを確保しようとする買いを集め、予想外に堅調な内容となっていた。
スワップ市場では、米金融当局が早ければ3月にも利下げに踏み切るとの見方がさらに織り込まれた。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏によれば、米金融当局がインフレとの闘いに勝利したという楽観論は、よく言っても行き過ぎた見方だ。今後数カ月のデータは、利下げ開始を早くても5月に遅らせるよう当局に促す内容となる可能性が高いという。
ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」を創業したメリルリンチの元トレーダー、トム・エッセイ氏は「『サンタ・ラリー』が多くの投資家を慢心させた」と指摘。「2024年を迎えるにあたり、S&P500種が最高値を更新するには新たな好材料が必要だ」と述べた。
S&P500種株価指数
出所:ブルームバーグ
企業ニュースでは、米国際貿易委員会(ITC)によるアップルの一部スマートウオッチの販売禁止措置を、米連邦特別行政高裁が一時停止する判断を下した。また米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は同社コンテンツを人工知能(AI)ツールの学習向けに許可なく使用したとして、マイクロソフトとオープンAIを提訴した。
米国債
米国債市場では利回りが年限全般で低下。5年債入札が好調な結果となったことが追い風となった。28日には年内最後となる7年債入札が実施される。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.95% | -9.8 | -2.43% |
米10年債利回り | 3.79% | -10.8 | -2.77% |
米2年債利回り | 4.24% | -11.5 | -2.63% |
米東部時間 | 16時53分 |
5年債入札の最高落札利回りは3.801%と、5月以来の低水準。入札前取引(WI)水準の3.815%を約1.4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下回った。強い引き合いが見られたことで、利回りはこの日の低水準をつけた。今回の入札予定が先週発表されて以降、利回りは総じて3.86%を上回って推移していた。
為替
ニューヨーク外国為替市場ではドルが軟調。カナダ・ドルを除き、すべての主要通貨に対して下落した。米国債利回りの低下に加え、年末を控えたポートフォリオ調整が背景にある。ドル指数は5カ月ぶりの低水準となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1210.87 | -4.71 | -0.39% |
ドル/円 | ¥141.82 | -¥0.58 | -0.41% |
ユーロ/ドル | $1.1107 | $0.0065 | 0.59% |
米東部時間 | 16時54分 |
円は対ドルで上昇。好調な米5年債入札を受けて米国債利回りが下げを拡大する中、一時0.6%上昇の141円55銭まで買われた。日本銀行が27日に公表した「主な意見」によると、18、19日開催の金融政策決定会合では、2%の物価安定目標の実現や金融政策の正常化のタイミングについて、政策委員の間で意見が分かれている状況が浮き彫りになった。
世界的に利回りが低下する中、主要通貨ではスイス・フランの上げが目立ち、対ドルでは一時、2015年1月以来の高値となる1ドル=0.8409フランをつけた。
WTI先物と50日、200日の各移動平均線
出所:ICE、ブルームバーグ
フーシ派(イエメンの親イラン武装組織)による紅海での船舶攻撃で、供給懸念がくすぶっている。海運大手ハパックロイドは、商船を守る米国主導の多国籍部隊が発足した後も、同社船舶の紅海通航を引き続き見合わせる方針を明らかにした。
ハパックロイド、紅海ルートはまだ危険過ぎる-喜望峰経由を継続へ
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は前日比1.46ドル(1.9%)安の1バレル=74.11ドルで終了した。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.42ドル(1.8%)安の79.65ドル。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「紅海でさらなる攻撃があればもちろん別だが、年末が近づくにつれ、薄商いの中でポジション再調整に重点を置く動きが強まるだろう」とリポートで指摘した。
金
金相場は4営業日続伸。年末の薄商いの中で国債利回りが低下し、ドルが下落したことが相場を支えた。米当局は積極的な利下げを来年進めるとの見方が金融市場全般に織り込まれている。
金利スワップ市場は来年3月までの米利下げ確率を85%ほど織り込んでいる。利回りと金利の低下は通常、金のような金利の付かない資産にとって強気材料となる。
金スポット価格
出所:ブルームバーグ
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時26分現在、前日比0.5%高。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は23.30ドル(1.1%)高の1オンス=2093.10ドルで取引を終えた。