概要:米テキサス州のダラスに金融業界から熱い視線が注がれている。ウォール街の大手金融機関3社は今年、ダラスで新たなオフィス建設に着手し、全米有数のスピードで成長するテキサス州の中でも特に成長が著しい同市への進出を確固たるものにした。
ウォール街の大手3行が2023年にダラスで新キャンパス着工
パンデミック後の人や富の移転でテキサス州に活気生まれる
ジョンソン・ダラス市長、ゴールドマンのジョン・ウォルドロン社長兼COO、ヒルウッド・ディベロップメントのロス・ペロト・ジュニア会長(10月10日、新キャンパスの起工式にて)
ダラスのジョンソン市長は10月、ゴールドマン・サックス・グループがダラス中心部近くのビクトリーパークに建設する5000人規模のオフィスキャンパスの起工式で、「スマートマネーの視線は今、ダラスに注がれている」と述べた。
こうした金融機関の進出もあり、ダラスはアトランタやマイアミといった競合都市を圧倒し、南部における金融の中心地としての地位を確固たるものにしつつある。テキサスでは人や企業の急速な流入により、建設や外食など金融とは直接関係のない業界でも雇用創出の好循環が生まれている。
ただテキサスでは、州の政治的な要素が業界の拡大ペースに悪影響を及ぼす恐れがある。テキサス州の司法長官室は10月、バンク・オブ・アメリカ(BofA)やJPモルガン・チェースなど金融企業10社について、気候変動への懸念を理由に石油・ガス業界との取引を制限する企業に制裁を科す州法に違反していないかどうか調査していると発表した。また州当局者らは、銃器メーカーを「差別」する企業との契約を制限する2021年成立の州法を巡り、金融機関に対する調査を実施した。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は11月、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、社の方針として銃器や化石燃料業界との取引を制限する米銀に制裁を科すことを目指す州法によって、テキサス州はビジネスに優しいという評判を落とすリスクがあると警告した。一方、パクストン州司法長官は、そうした懸念は行き過ぎだと指摘している。
ダイモン氏がテキサス州に警告、反ESGの州法で評判落とすリスク
ただ現在のところは、ダラスの金融セクターに減速の兆しは全く見られない。ウェルズ・ファーゴは3000人収容のオフィスキャンパスをダラス近郊のアービングに建設する。11月にはBofAが、ゴールドマンの新キャンパスから1マイル(約1.6キロメートル)も離れていないエリアで、30階建て高層ビルの起工式を行った。
ダラスにあるコメリカ銀行のオフィスタワー