概要:好調だった2023年が終わり、投資家の最大の関心は、株式市場の上昇が2024年も続くかどうかに向かっています。Business Insiderはウォール街における2024年の株式市場の展望を包括的なリストとしてまとめました。
ウォール街では、景気後退から上げ相場の継続まで、さまざまな見通しが流通している。
好調だった2023年が終わり、投資家の最大の関心は、株式市場の上昇が2024年も続くかどうかに向かっている。
Business Insiderはウォール街における2024年の株式市場の展望を包括的なリストとしてまとめた。
不況から上げ相場にいたるまで、2024年のS&P 500に対するトップアナリストの予測は多岐にわたる。
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ひどい年だった2022年が終わり、2023年は好況に転じた。S&P 500は20%、Nasdaq 100は50%の上昇を示した。
回復力を示した経済、インフレ率の緩和、金利の潜在的ピークに後押しされて、投資家は迫り来る景気後退の恐れを退け、株式投資に戻ってきた。そして今、2024年も好調な市場が続くのか、それとも景気の減速やそれに続く市場の暴落が差し迫っているのかという疑問に、投資家は最大の関心を向けている。
Business Insiderは、2024年の株式市場に関するウォール街の予測を完全な概要として以下にまとめた。
ウォール街では、景気後退から上げ相場の継続にいたるまで、さまざまな見通しが流通している。
BCAリサーチ:弱気、S&P 500の株価目標は3300
BCAリサーチ(BCA Research)社の2024年予測は、S&P 500が景気後退の始まった2008年以来最悪規模の暴落を経験する恐れがあると指摘する。
「2023年、米国とユーロ圏では景気が後退しなかったが、景気後退が回避できたわけではない。金融政策が大幅に緩和されない限り、先進国市場(DM)は景気後退への道を歩むことになる。したがって、リスクリワードのバランスは株式にとって非常に不利な状況にある」とBCAリサーチは考える。
FRB(連邦準備制度理事会)が即座に金利を下げれば、株式市場は2024年の急激な下げを回避できるかもしれないが、BCAリサーチはインフレ率が急速に下がることはないと考えるため、大きな期待はしていない。
「我々は依然としてディスインフレ派に属しているが、インフレが迅速に鈍化することは期待できないため、FRBやECB(欧州中央銀行)の利下げが間に合わず、失業者が大幅に増えると見込んでいる。景気後退が目前に差し迫るか、あるいはインフレが完全に収束しない限り、FRBが夏までに金利を下げることはないだろう」とBCAリサーチは主張する。
BCAリサーチは、2024年の景気後退では、S&P 500が3300から3700のあいだに落ち込むまでリバウンドが起こることはないと予想する。
JPモルガン:弱気、S&P 500の株価目標は4200
JPモルガン(JPMorgan)は、高い株式価値、高金利、弱い消費活動、地政学的リスクの増加、そして潜在的な景気後退を理由に、2024年の株価が上昇する見込みはほとんどないと考える。
JPモルガンのマルコ・コラノヴィッチ氏とドゥブラウコ・カコス=ブジャス氏は2024年の展望リポートで「我々は、投資家の立ち位置と感情がほぼ反転した現状において消費者の動向が軟化することで、2024年の株式にとってマクロ環境が厳しくなるものと予想する」と主張する。
「現在、株式はボラティリティーが歴史でも珍しいほど低い水準にあり、割高に評価されているが、地政学的および政治的リスクは依然として高い。そのため、利益成長は世界的に鈍化し、株式は現状を維持できないと予想する」とJPモルガンは発表した。
モルガン・スタンレー:中立、S&P 500の株価目標は4500
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は2024年の株式市場は現状を維持すると見るが、一部の市場はほかよりも活況を示すと予想する。
メガキャップテック株式の極めて狭いリーダーシップは2024年の前半も続くかもしれないが、最終的には崩壊すると、モルガン・スタンレーは考える。
同社の見方によると、「現時点における投資家の疑問は、リーダー企業がほかの企業を自分たちのパフォーマンスレベルにまで引き上げることができるか、それともほかの企業に足を引っ張られてこの厳しいマクロ環境のなかで成果を出し続ける能力を失ってしまうのか、という点にある」
「このダイナミクスは2024年の前半も続くと予想され、持続的な収益回復が実現するのはそのあとだと考えられる(我々は2024年に最終的に7%の収益成長を見込んでいる)」
投資家に対してモルガン・スタンレーは、高価なテック株を避け、代わりに保守的な成長株、たとえば医療、公益事業、消費財などといった分野、ならびに産業やエネルギーなどを中心とした後期サイクルの景気循環株へ投資するよう呼びかけている。
シュティフェル:中立、S&P 500の株価目標は4650
シュティフェル(Stifel)で市場ストラテジストとして活躍するバリー・バニスター氏は、S&P 500は2024年の前半に上昇を示し、4650に達すると予想する。これは現在の水準から2%未満の上昇を意味する。
バニスターは、メガキャップの成長株は、金融、エネルギー、資源、不動産セクターの循環型のバリュー株に比べて低調な動きを見せ、加えてFRBは2024年前半には利下げを行わないと予想する。
「2030年代の初頭まで、S&P 500は実質ベースで現状レンジを維持すると予想できる。このようなリフレーション的な経済成長環境は、バリュー株やスモールキャップ株、あるいは国際株に恩恵をもたらす。S&P 500全体としてのリターンは、2011から2021年にかけての10年で経験された成長的な14.1%には届かないだろう。そのようなハイレベルなリターンは、今後しばらくは再現できないと考えられる」
NDR:強気、S&P 500の株価目標は4900
ネッド・デイビス・リサーチ(Ned Davis Research:NDR)は、ジェローム・パウエルFRB議長が軟着陸を試みようとしていることから、2024年は1年を通じてFRBに注目が集まると考える。NDRは、軟着陸が実際に行われる確率を70%と見積もっている。
「インフレ率が低下すれば、FRBは利下げを行い、10年国債の金利は3.5%程度にまで下がるだろう。軟着陸により、循環的な強気市場が続く。我々の考えるS&P 500の目標は4900で、これは現状から7%の上昇を意味する」とNDRは発表した。
NDRは、米国経済は2024年に最大1.5%のGDP成長率を記録すると予想したうえで、大統領選挙が始まるため、上半期は下半期よりも不安定になるかもしれないと付け加えた。NDRは投資家に、スモールキャップ株と循環株に注目することを勧めている。
バンク・オブ・アメリカ:強気、S&P 500の株価目標は5000
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)は、FRBが積極的な金利の引き上げと、継続的なバランスシートの縮小を1年以上続け、金融政策をうまく引き締めてきたことを理由に、2024年の株式市場を強気に見積もっている。
「我々が強気なのは、FRBが利下げすると考えるからではなく、FRBがこれまで成し遂げてきたことを見たうえでの判断だ。企業は高金利とインフレに対応できている」とバンク・オブ・アメリカのサヴィタ・サブラマニアン氏が2024年の展望リポートで述べている。
また、投資家が潜在的な景気後退に関心を向け、よい知らせよりも悪いニュースに注目していることも、助けになっている。
「マクロ経済が最も不安定な時期は過ぎ去った。市場は甚大な地政学的ショックをすでに吸収した。悪いニュースについて話せていることが、よい知らせだ」とバンク・オブ・アメリカは主張する。
RBC:強気、S&P 500の株価目標は5000
カナダロイヤル銀行(RBC)の2024年の展望では、11月の株式市場で見られた9%の強い上昇が、2024年に見込まれていた上昇の一部を先取りしてしまったとも考えられるが、それでもまださらなる上昇が見込めるそうだ。
インフレ率の低下の継続が、2024年に期待される上昇のおもな推進力となる。
「[我々の評価]モデルでは、暗黙の前提として、インフレ率の低下が続くことで株価収益率が大きく上昇すると考える。アナリストは同じことが1970年代にも起こったとみなしている」とRBCは言う。「このモデルは、2023年の予測に用いた我々の武器のなかで最も建設的なもので、12月にグリンチの代わりにサンタが現れれば、最も正確なものになる可能性がある」
また、RBCは、2024年は大統領選挙の影響で市場が不安定になると考えられるが、S&P 500はかつての大統領選挙の年には、平均して7.5%の上昇を示してきたと付け加えた。
「このデータが、大統領選挙の年はいつも、米国株式市場にとって不確実性の源になるということを示している。2024年の選挙戦の特殊性を考慮すると、2024年の株式市場にも政治的背景が影響すると考えるのは妥当だと思われる」
フェデレーテッド・エルメス:強気、S&P 500の株価目標は5000
フェデレーテッド・エルメス(Federated Hermes)の株式戦略主任のフィル・オーランド氏によると、現在の堅調さが2024年の株式市場でも続く可能性が高い。
「我々は株価が上昇すると見込んでいる。すでに4100から4500に上昇した。このトレンドが続くと考えられる」とオーランド氏は11月に発表した。
オーランド氏がそこまで強気なのは、インフレがピークを過ぎて明らかに冷え込んでいることを理由にFRBが利上げを終えたとみなしているからだ。
「7月のFRBの金利引き上げ以来、債券市場もそれに歩調を合わせてきた。その結果、FRBは一歩下がって『我々はこれ以上利上げする必要なない。次の年はここにじっと座って、インフレがゆっくりと鈍化するのを待とうじゃないか』と言う余裕ができた」とオーランド氏は述べている。
ゴールドマン・サックス:強気、S&P 500の株価目標は5100
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、インフレ率の低下、企業収益の増加、FRBのハト派的ポジションへの移行により、2024年のS&P500種株価指数は現在より約8%上昇すると予想している。
ゴールドマン・サックスは以前、2024年のS&P500の目標株価を4700に設定しており、この年は株価がほぼ横ばいになると予想していた。だが、わずか1カ月後に目標株価を5100に引き上げた。
ゴールドマンは、最近の経済データの数々が、インフレがFRBの長期目標である2%まで急速に冷え込んでいることを示していると述べた。
ゴールドマン・サックスは、「いくつかの指標によれば、トレンドはすでに2%かそれに近い水準にある」と述べた。
ゴールドマン・サックスの予想が急に変更された背景には、インフレが減速し、金利が低下するなか、FRBが12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でハト派に転じたことがある。
「インフレの減速とFRBの緩和は実質利回りを低く保ち、19倍を超える株価収益倍率を支えるだろう」とゴールドマンサックスは語る。「2024年末の事前予想では、利回りは2.3%、株価収益率(倍率)は18倍を想定していた」
ドイツ銀行:強気、S&P 500の株価目標は5100
インフレ率が下がり、GDPの成長率が堅調に推移するなか、米国経済は軟着陸に向かっており、それが株式市場にとって明るいニュースになっている、とドイツ銀行(Deutsche Bank)の2024年株式市場展望リポートは指摘する。
また同行は、たとえ2024年に景気後退が始まったとしても、多くの投資家はそれを予測しているため、株価にはさほど大きな影響を与えないと考える。
同行の予測では、2024年にS&P 500は10%上昇して5100を記録する。景気の後退が回避できた場合は、上げ幅はおよそ倍増し19%になる可能性もある。
BMO:強気、S&P 500の株価目標は5100
バンク・オブ・モントリオール(Bank Of Montreal:BMO)の2024年展望リポートによると、たとえ景気後退が起こったとしても、株式市場は2024年も堅調を続け2年連続で上げ相場となるだろう。
インフレ率の低下、利下げ、好調な雇用市場そして企業収益の上昇が、2024年の株式市場にとって追い風となる。
「2023年の米国株式市場のパフォーマンスと基盤は、我々が今後3年から5年で実現するといまだに確信している収益増加、バリュエーション動向、株価パフォーマンスの常態化の道筋となる基礎を築くことを目的とした台本にしたがっていたと、我々は考える」とBMOは発表した。
ファンドストラット:強気、S&P 500の株価目標は5200
今回もまた、ファンドストラット(Fundstrat)のトム・リー氏がウォール街で最も強気なストラテジストだ。リーのS&P 500目標は5200で、現状レベルの14%上を行く。
リー氏は、2024年の後半にFRBが「インフレ戦争」から「景気循環のマネジメント」へと重点を移すことが、そのような上昇のおもな原因となると指摘する。つまり、利下げは翌年までお預けということだ。
その一方で、経済は堅調な基盤を維持する必要がある。
「我々は今、後期サイクルではなく初期サイクルにいることを、累積需要が示唆している」とリー氏は言う。企業収益の回復力と個人消費の堅調さを目にしてその事実に気づいた投資家たちが、株式を買い始めるだろう。
「投資家たちは、2023年に2400億ドル(約33.8兆円)を引き揚げた小売業界に投資するだろう」。そしてこう付け加えた。「2024年、株式は一般の予想を上回る上昇を見せ、12%から15%のリターンをもたらす」
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※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。