概要:12日の米国債市場では、2年債利回りが5月以来の水準に低下した。米生産者物価指数(PPI)が予想外の低下となったことを受けて、今年の利下げ観測が高まった。
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2024年1月13日 6:53 JST
S&P500種ほぼ変わらず、マイクロソフトが時価総額で世界首位に
原油は続伸、米英軍のフーシ派拠点空爆で中東情勢巡る懸念高まる
12日の米国債市場では、2年債利回りが5月以来の水準に低下した。米生産者物価指数(PPI)が予想外の低下となったことを受けて、今年の利下げ観測が高まった。
米PPI、前月比で3カ月連続の低下-利下げ観測が再び強まる (2)
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.17% | -0.2 | -0.04% |
米10年債利回り | 3.93% | -3.3 | -0.82% |
米2年債利回り | 4.14% | -10.7 | -2.53% |
米東部時間 | 16時52分 |
市場は足元、3月利下げの可能性を80%と織り込んでおり、1週間前の約50%から上昇した。前日発表された消費者物価指数(CPI)は予想を上回る伸びとなり、米金融当局が2%のインフレ目標を達成する上で道のりが険しいことを浮き彫りにした。投資家は連休を控え、地政学的な動向に目配りしながら、決算シーズンの皮切りとなった大手銀の決算にも注目した。15日は米キング牧師生誕記念日の祝日となる。
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BMOキャピタル・マーケッツのベン・ジェフェリー氏は「3月の利下げ観測を後退させる材料はほとんどなく、週末を控えてこの動きが弱まることもないだろう」と指摘。質への逃避と供給サイドのインフレの両方に影響が及ぶことを踏まえ、紅海における地政学的な緊張の高まりも忘れてはならないと述べた。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は、PPIがすでに、かなり以前からCPIを上回るペースで鈍化している点を考慮すれば、今回の下振れを「サプライズ」とみるのは少し無理があるかもしれないと述べる。
「市場は『インフレ鈍化は金利低下を意味する』とのシナリオに沿ったデータを受け入れる傾向がある。だが、こうした筋書きが、すでに複数回の利下げを市場が織り込んでいる現実とぶつからないかは、今後明らかになる」と述べた。
債券市場は通常、2年債利回りの大幅な低下を伴い、金融緩和サイクルを先取りする傾向がある。とはいえ、足元の動きは、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合までなお多くの経済指標の発表を控えている段階で、期間短めの債券利回りを極端な水準に押し下げることになりかねない。米金融当局は、インフレが目標である2%に向けて確実に下がっているのか見極めるため、慎重な姿勢を示し続けている。
コロンビア・スレッドニードルのグローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「期間短めの債券は通常、いったん利下げが始まると過小評価する傾向があるため、この動きは理にかなう」と話す。また「米金融当局が今年3回の0.25ポイント利下げを想定しているのに対し、市場ははるかに多くの利下げを織り込んでいる」とし、「米金融当局はデータ次第の姿勢を強調していることから、市場の観測をコントロールするのに苦慮している」と述べた。
米資産運用会社ブラックロックのロブ・カピト社長は、眠っている巨額の投資マネーが、近いうちに債券に振り向けられるかに注目していると語った。
カピト氏は12日開催した決算電話会見で「毎朝、マネー・マーケット口座に眠っている7兆ドルもの資金が動き出すことを心待ちにしている」と指摘。債券には大きな可能性があるとの見解を示した。
米国株
米国株式市場では、S&P500種株価指数がほぼ変わらずで終えた。ただ、週間では約1.8%値上がりした。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4783.83 | 3.59 | 0.08% |
ダウ工業株30種平均 | 37592.98 | -118.04 | -0.31% |
ナスダック総合指数 | 14972.76 | 2.58 | 0.02% |
マイクロソフトは1%高。時価総額でアップルを抜き、世界トップに立った。首位返り咲きはおよそ2年ぶり。年初来では3.3%の値上がりで、時価総額を920億ドル押し上げている。
為替
ニューヨーク外国為替市場では、主要通貨の中で円の値上がりが目立った。ブルームバーグ・ドル・スポット指数はほぼ変わらず。米2債利回りの低下がドルの重しとなった。
円は一時0.6%高の144円36銭まで買われた。直近では144円台後半で推移している。ただ週間では、円は対ドルで0.2%値下がりした。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1224.77 | 0.28 | 0.02% |
ドル/円 | ¥144.89 | -¥0.40 | -0.28% |
ユーロ/ドル | $1.0950 | -$0.0022 | -0.20% |
米東部時間 | 16時52分 |
バークレイズのエコノミストは今週のインフレ指標に基づき、米利下げ開始時期の予想を従来の6月から3月に前倒しした。
JPモルガン・チェースのアナリストは、インフレに関する楽観論は十分に織り込み済みで、いくつかの指標では米国例外主義が依然として持続しており、ドルは手詰まり状態にあるとみている。「上期は例外主義の復活を見込みドルに対して強気だが、差し迫った材料がないため、目先の確信は低いままだ」という。
TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダン・ガリ氏は「エネルギー市場は地政学的リスクの継続的な高まりを踏まえると著しく割安となっている」と指摘。もしブレント原油が81ドルを上回れば買いが加速し、「アルゴリズム取引を行う投資家はネットロングのポジション構築開始を余儀なくされる」可能性があると語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は前日比66セント(0.9%)高の1バレル=72.68ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は88セント(1.1%)高の78.29ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。米英軍がイエメンのフーシ派軍事拠点に対する空爆に踏み切ったことで中東情勢がさらに緊張するとの見方が広がり、金への逃避需要が強まった。
また、米PPI統計発表後の利下げ観測の高まりも金相場には支援材料。金価格は通常は金利と逆相関の関係にあり、金利が低下すると上昇する傾向にある。
金スポット価格は一時1.6%上昇し、日中ベースで1カ月ぶりの大幅高となった。
MKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は「金価格は緊張の高まりに反応している。欧米が徐々に中東紛争に巻き込まれつつあることが明確に示されている」と語った。
ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は前日比32.4ドル(1.6%)高の1オンス=2051.60ドルで終了した。