概要:世界の主要な債券市場で、ついにトレーダーが中央銀行の警告に注意を向け、今年の急激な利下げを見込むポジションを縮小し始めた。
米欧英の当局が今年行う利下げの見通し、金融市場でいずれも後退
英国のインフレ加速、米国の好調な小売売上高がポジション修正促す
世界の主要な債券市場で、ついにトレーダーが中央銀行の警告に注意を向け、今年の急激な利下げを見込むポジションを縮小し始めた。
かつては事実上確実だと投資家が見なしていた米国の3月利下げ開始は、いまや確率が半々に低下。米当局者は慎重に動くべきだと述べて急激な利下げ見通しを戒めたウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事の発言や、予想以上に好調で米経済の強さを示した小売売上高を受け、米国債利回りは全年限で上昇した。
3月の米利下げ確率、わずか50%程度に低下-金利スワップ市場が示唆
同様のポジション修正は英国でも進行している。17日朝に発表された英国のインフレは予想外に加速し、英10年債利回りは一時20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上昇と、ほぼ1年ぶりの大幅上昇ペース。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁もブルームバーグとのインタビューで急激な政策緩和を見込む市場はインフレとの闘いの助けにならないと述べ、国債の売りに拍車をかけた。
アメリベット・セキュリティーズの米金利責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「中央銀行の主張は変わっていない。進展はしたが、インフレが再燃しないよう確実にする必要があるというものだ」と指摘。「金融環境は劇的に緩和した。利下げ期待を当局者は押し戻そうとし、市場は耳を傾けつつある」と述べた。
比較的堅調な雇用や経済、インフレが根強く目標を上回る水準にとどまり続ける懸念など、中銀が慎重になる要因はいくつかある。インフレを当初は一過性だと予測していた多くの政策当局者にはそのトラウマがあり、主要国でインフレがピークを過ぎたとしても脅威を再び過小評価し、拙速な緩和を行うことには警戒感がある。
ステート・ストリートのロン・オハンリー最高経営責任者(CEO)は17日にダボスで、米国の労働市場と経済の健全性に鑑みれば、当局は「長過ぎるぐらい金利据え置きを続ける」だろうと予想。
「米当局はインフレ再燃を目にしたくはないだろう。ドットプロット(金利予測分布図)でそれは極めて明らかだ。なぜ市場が利下げ見通しを倍賭けし、浮かれているのか分からない。理解できない」と語った。
17日の米債券市場では、金融政策への感応度が高い2年債が最も大きく売られている。同利回りは過去2日間で20bp余り上昇して利回り曲線はフラット化し、中銀のハト派的な見通しが後退した際に見られる典型的な動きを示した。先物市場では米当局が今年行うとみられる利下げ規模が同日に約16bp縮小し、141bpほどとなった。