概要:米カリフォルニア州教職員退職年金基金(CALSTRS)の最高投資責任者(CIO)にクリストファー・エイルマン氏が就任した2000年、同基金が管理する4ドルのうち1ドルは公社債と住宅ローン証券に投資されていた。エイルマン氏は過去20年間、その割合を着実に減らし続け、昨年はわずか10%にまで低下させた。
2024年1月18日 15:45 JST
「私たちが今いる場所は変曲点」-バンガードのモラン氏
機関投資家の70%近くが新年に向け債券に強気-ナティクシス調査
米カリフォルニア州教職員退職年金基金(CALSTRS)の最高投資責任者(CIO)にクリストファー・エイルマン氏が就任した2000年、同基金が管理する4ドルのうち1ドルは公社債と住宅ローン証券に投資されていた。エイルマン氏は過去20年間、その割合を着実に減らし続け、昨年はわずか10%にまで低下させた。
しかし、米国で2番目に大きな公的年金基金を率いる同氏は今こそ方針を転換すべき時だと言う。
「債券が戻ってきた」と、CALSTRSで3180億ドル(約47兆1000億円)を運用するエイルマン氏はインタビューで語った。高めの利回りに加え、各国・地域の金融緩和開始で大きな利益を得られる可能性がある国債はより魅力的になっていると指摘した。世界の債券価格は23年、3年ぶりに上昇した。
何年も他の資産での運用を強化した後、債券に回帰する機関投資家が増えている。CALSTRSもその一つだ。
ナティクシスが最近行った調査によると、機関投資家の70%近くが新年に向け債券について、株式やプライベートエクイティー(PE、未公開株)、プライベートクレジットを含む他のどの資産クラスについてよりも強気だった。
クリストファー・エイルマン氏
ほとんどの主要市場でインフレ率は低下傾向にあり、トレーダーは米国で今年6回程度の利下げを見込んでいる。米連邦準備制度は既に、バランスシート縮小ペースを緩めることを示唆し始めており、これも実現すれば債券にとって追い風になる。
JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は、米当局がいわゆるソフトランディングを実現できず、米経済がリセッション(景気後退)に陥った場合、金利はさらに低下する可能性が高いと指摘する。
「24年に米連邦準備制度が利下げに踏み切る理由は幾つもある。債券を保有することへの確信を私が深めているのはそのためだ。債券はソフトランディングでもハードランディングでも価値がある」と同氏は語った。
変曲点
1050億ドル規模のバンガード・ウェリントン・ファンドを運用するローレン・モラン氏は、米国債10年物利回りが4%を超え、米投資適格債の利回りが約5.2%であることから、債券は依然として魅力的な金利を提供していると話す。
「私たちが今いる場所は変曲点であり、過去数年間見てきたものよりも、債券にとってかなり魅力的な機会だ」とモラン氏は述べ、「金融環境タイト化の影響の初期兆候が見えてきており、はるかに高い利回りで資金を活用する機会がある」と説明した。
モラン氏は昨年末から長期の米国債にシフトしており、満期が近い米国債をターゲットにしていたこれまでとは逆転している。
CALSTRSの最も新たな長期計画には、債券の目標配分を今年半ばまでに13%、25年半ばまでに14%に引き上げる方針が盛り込まれている。一方、上場株へのエクスポージャーは現在の目標42%から今後数年間で38%に減らす方針。
ブルームバーグがまとめたデータによると、少なくとも一つの指標で債券は米国株に対して、過去20年余りで最も魅力的なバリュエーションを提供している。
いわゆる株式リスクプレミアムによれば、S&P500種株価指数の益回りは、債券利回りに対して04年以来最も低い水準で推移している。
ブラックロックのウルスラ・マルキオーニ氏は、年金基金や大手資産運用会社のマルチアセットポートフォリオ約1000について毎年アドバイスしているが、債券への転換はまだ始まったばかりだと話す。
「新しいマクロ体制に移行し、顧客は再び債券に回帰している。投資家の債券保有が構造的に不足していた長い期間が終わろうとしている」と同氏は述べた。