概要:19日の米株式相場は続伸。年内の利下げ観測が企業利益の見通しを上向かせ、S&P500種株価指数は終値ベースで最高値を更新した。
ミシガン大消費者調査でマインド指数が上昇、インフレ期待が低下
S&P500の最高値更新は2年ぶり、ハイテク主導の上げに警戒感も
19日の米株式相場は続伸。年内の利下げ観測が企業利益の見通しを上向かせ、S&P500種株価指数は終値ベースで最高値を更新した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4839.81 | 58.87 | 1.23% |
ダウ工業株30種平均 | 37863.80 | 395.19 | 1.05% |
ナスダック総合指数 | 15310.97 | 255.32 | 1.70% |
最も寄与度の高いハイテク株を中心に上昇し、S&P500種は2年ぶりに最高値を更新した。人工知能(AI)ブームが相場をさらに押し上げるとの期待に後押しされ、同指数は節目の4800を突破。上げが狭いグループに集中しているとの警戒感を後退させた。
米国債のボラティリティーが低下し、リスク選好を促した。1月の米ミシガン大学消費者調査(速報値)では、マインド指数が大きく上昇した一方、インフレ期待が低下。BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「全体として、米金融当局の観点からは心強いデータだった」と指摘した。
米消費者マインド大幅改善、1年先インフレ期待は3年ぶり低水準 (2)
B・ライリー・ウェルスのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「2024年に入り、基礎的な経済データは悪いニュースよりも良いニュースの方がずっと多く、インフレは落ち着きつつある。インフレが徐々に緩和し続け、米国の利上げが終了し、2024年後半には経済成長が再加速するとの信ぴょう性のある道筋が見えている」と述べた。
昨年に株高をけん引した企業グループが、2024年も再び主導している。いわゆる「マグニフィセント・セブン」の一角であるエヌビディア、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、アルファベットが年初来の上げで、S&P500種構成銘柄の上位を占めている。今週は半導体株も高い。台湾積体電路製造(TSMC)の強気予想が好感された。
TSMC、底堅い成長への回帰見込む-24年の需要回復期待を示唆 (1)
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のマイケル・ハートネット氏率いるチームがまとめたリポートによれば、投資家は成長株やテクノロジー株、「AIバブル」関連銘柄、そしてアップルを含むマグニフィセント・セブンに回帰しつつある。
ハートネット氏らはEPFRグローバルのデータを引用し、17日までの1週間に米国株市場では43億ドルの資金が流出したが、テクノロジー株の投資ファンドには2週間で40億ドル(約5930億円)と、昨年8月以来の大規模な資金が流入したと述べた。
成長株やAI関連が再び選好銘柄に-BofAのハートネット氏
ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「要するに、強気の沸騰状態から脱し、完璧な状態ではなくなったが、まだしっかりと前向きに傾いている」と語った。
米国債
米国債市場では10年債利回りはほぼ変わらず。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.33% | -3.6 | -0.82% |
米10年債利回り | 4.12% | -1.9 | -0.47% |
米2年債利回り | 4.38% | 3.2 | 0.74% |
米東部時間 | 16時57分 |
シカゴ連銀のグールズビー総裁は、インフレ鈍化が続けば利下げの議論を行うに値するだろうと述べた。米金融当局は会合ごとに判断するとも強調した。アトランタ連銀のボスティック総裁は、データ次第では利下げ時期に関する自身の見方を変えることにオープンだと述べた。ただし、緩和政策を実施する前にインフレが当局の2%目標に向かって「順調に」進んでいることを確認したいとの考えを示した。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、利下げが近いと考えるのは「時期尚早」だと指摘した。
シカゴ連銀総裁、インフレ鈍化続けば利下げ議論に値する-データ重視
ボスティック氏、利下げ時期の見方変えることに前向き-データ次第で
サンフランシスコ連銀総裁、利下げが近いと考えるのは「時期尚早」
ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるモハメド・エラリアン氏は「利下げは実施されると思うが、市場が期待しているほど早くも深くもないだろう」と述べた。
市場は米利下げのペースと幅を過大に織り込み-エラリアン氏
外為
ニューヨーク外国為替市場ではドル指数が小幅安。堅調な米経済指標や金融当局者の発言、つなぎ予算の成立を背景にS&P500種が最高値を更新したため、逃避目的のドル買いが後退した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1235.40 | -2.97 | -0.24% |
ドル/円 | ¥148.15 | -¥0.01 | -0.01% |
ユーロ/ドル | $1.0897 | $0.0021 | 0.19% |
米東部時間 | 16時57分 |
対ドルの円相場はニューヨークの取引時間帯では1ドル=148円台前半から半ばを中心に推移した。
原油
ニューヨーク原油相場は反落。世界的な供給拡大の兆候が中東情勢の緊迫化による影響を打ち消した。
米国の複数回にわたる空爆にもかかわらず、海運の要衝である紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシ派による商船攻撃が続いている。一方、国際エネルギー機関(IEA)は今年の石油市場は十分な供給を維持すると予想した。
今年の石油市場は潤沢な供給に、OPECプラス以外で増産-IEA
CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は、市場では中国経済を巡る懸念から需給面での悲観論が広がっており、押し上げ要因として地政学的な動向に大きく依存していると指摘。「地政学的なニュースは原油が買われ続けるためのいわば酸素だ」とし、新たな材料がなければ値上がりするのは難しいと述べた。
サクソバンクの商品戦略責任者、オレ・ハンセン氏は「利下げが開始されるまで、市場は時に先走る可能性がある。その過程で価格調整が入りやすい水準まで利下げ期待が高まる」と指摘。目先の相場の方向性は「今後も入手される経済データと、それが利下げの時期とペースに与える影響に左右されるだろう」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時38分現在、前日比5.83ドル(0.3%)高の1オンス=2029.17ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比7.70ドル(0.4%)高の2029.30ドルで終了した。