概要:本記事では、サーキットブレーカーとキャリートレードについて解説します。
最近の市場は非常に不安定で、円高進行や米国景気後退の懸念から、株式を売却し、安全資産とされる国債に資金を移す動きが強まっています。このため、市場関係者は「株安を止められなかった」と見ています。
5日は、日経平均などの先物が規定の8%を超えて急落したため、午前と午後にサーキットブレーカーが発動されました。しかし、日経平均は最終的に12%安で終わりました。また、同日は長期金利の指標となる10年物国債利回りが0.75%と4月以来の低水準に低下し(債券価格は上昇)、サーキットブレーカーの重要性やキャリートレードの再評価が進んでいます。本記事では、サーキットブレーカーとキャリートレードについて詳しく解説します。
サーキットブレーカー(circuit breaker)とは、金融市場の急激な変動から投資家を保護するためのメカニズムです。株式市場や先物取引において価格が一定以上の変動を起こした場合に、証券取引所が取引を10分間制限・中断する制度です。1987年10月19日の「ブラックマンデー」を受けて、ニューヨーク証券取引所で導入されました。日本では1994年2月からこの制度が導入されています。
急激な株価の下落や上昇が発生した際に、取引を一時的に停止することで、投資家に冷静に市場の状況を見直す機会を提供します。
急激な価格変動が続くと市場全体の安定性が損なわれる可能性があり、サーキットブレーカーはその機能を果たし、過度な価格変動を防ぐ役割を担っています。
ニューヨーク証券取引所でのサーキットブレーカーの発動基準は以下の3段階です:
レベル1(7%下落):15分間取引を停止
レベル2(13%下落):15分間取引を停止
レベル3(20%下落):その取引日の残り時間は取引を停止
サーキットブレーカーのシステムはフラッシュクラッシュの後、さまざまな関係者や金融市場参加者からのフィードバックをもとに定期的に改訂されています。
・日経平均先物:午後2回
・TOPIX先物:午前、午後各1回
・東証グロース市場250指数先物:午前、午後各1回
・金標準先物:午後1回
・日経平均VI先物:午後2回
・長期国債先物:午前1回
・韓国KOSPI、新興市場コスダック、トルコの株式市場でもサーキットブレーカーが発動
これから、ローリスクで収益を確認させる取引、キャリートレードについて説明していきます。
キャリートレードとは、低金利の通貨で調達した資金を高金利の通貨に換えて資産運用し、運用益に加えて金利の利ザヤを稼ぐ取引のことです。特に円を調達して外貨に交換して運用する場合は「円キャリートレード」と呼ばれます。
円キャリートレードでは、機関投資家やヘッジファンドが低金利の円などの通貨で資金調達し、それをドルに換えて金利の高い米国債などで運用し、金利差収入を得ます。また、円キャリートレードが加速すると円が売られやすくなり、円安をもたらす要因の一つと見なされています。
8月5日のニューヨーク株式市場は、主要企業で構成されるダウ工業株平均が大幅に続落し、一時、前週末比1200ドル超下落し、3万9千ドル台を割り込みました。東京市場での日経平均株価の暴落後も、アジア、欧州、米国と「世界同時株安」が進んでいます。
特に値下がりが激しいのはハイテク株で、関連銘柄が多いナスダック総合指数は一時、6%超下落しました。これまで株高を牽引していたハイテク株が、米国経済の先行きへの不安から値下がりしています。
最近の世界的な株安は、米経済見通しの急激な変化よりも、「キャリートレード」の巻き戻しの影響が大きいとアナリストは見ています。円は対ドルで1カ月前に付けた38年ぶりの安値から11%も急騰し、投資家は不意を突かれました。ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者は、「当社の見立てによると、多くの売りはポジションの手じまいによるもので、端緒となったのは外為と円で、多数のマクロファンドが予想と異なる相場の流れに直面し、損切り注文が発動された」と説明しています。
最近の市場は不安定で、円高や米国景気後退の懸念から株式を売却し、安全資産に資金を移す動きが強まっています。5日は日経平均が急落し、サーキットブレーカーが発動されるなど、急激な価格変動が続きました。サーキットブレーカーは市場の過剰なボラティリティを抑え、市場の安定性を確保するために設けられた制度です。また、キャリートレードの巻き戻しが、最近の世界同時株安に大きく影響しています。
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