クレディ・スイス証券株式会社に対する行政処分について
平成28年4月25日
金融庁
クレディ・スイス証券株式会社に対する行政処分について
クレディ・スイス証券株式会社(以下「当社」という。)に対する証券取引等監視委員会による検査の結果、法令違反の事実が認められたとして、平成28年4月15日、行政処分を求める勧告が行われました。
当該勧告を受けたことから、本日(4月25日)、当社に対し、金融商品取引法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行いました。
1.勧告の事実関係
(1)法人関係情報の管理に不備がある状況
当社においては、株式調査部は、同部に所属するアナリストが上場会社に個別取材を行うなど、上場会社をリサーチし、顧客に対し、アナリストレポート等を提供するほか、ヘッジファンドや運用会社等の顧客に対する株式営業部のリサーチ営業をサポートしている。
株式調査本部長は、アナリストに対し、有意義な情報を顧客に対して直接提供することを指導し、平成27年1月以降は、アナリスト一人当たり1か月に100件という具体的な数値目標を掲げている。実際に、アナリストは、アナリストレポートのほか、電話や電子メール等によって、上場会社から取材等で取得した情報を顧客や営業員に提供したり、上場会社への個別取材における顧客との同行訪問によって顧客と情報を取得・共有したりしている。
また、当社においては、平成27年6月以降、アナリストは自己売買の担当者に対しても顧客と同様に情報の提供を行っている。
アナリストが上場会社から取材等で取得した情報のうち非公表のものには法人関係情報が含まれている可能性があるところ、顧客等に提供する情報の法人関係情報該当性については、アナリスト自身の判断に委ねたまま、株式調査部内においても、コンプライアンス担当者においても、審査がほとんど実施されていなかった。
こうしたことから、平成27年9月から10月までの間においては、少なくとも5件の法人関係情報(うち3件はアナリストレポートに掲載)について、法人関係情報該当性の審査がほとんどなされないまま複数の顧客に提供されていた。
当社における上記(1)のような法人関係情報の管理の状況は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められ、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
(2)法人関係情報を提供した勧誘
平成27年9月、Aアナリストは、上場会社である甲社に対する個別取材において、公表前の半期の連結業績予想(営業利益)に関する法人関係情報(以下「甲社情報」という。)を取得した翌日に、当社営業員1名及び少なくとも1顧客に対し、電話によって甲社情報を伝達している。
そして、甲社情報の伝達を受けた当該営業員が同日中に、少なくとも33顧客に対し、甲社情報を甲社から公表される前に提供して甲社株式の買付けの勧誘を行っていた。
当社における上記(2)のような株式の買付けを勧誘する行為は、有価証券の売買その他の取引等につき、顧客に対して法人関係情報を提供して勧誘する行為と認められ、金融商品取引法第38条第8号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第14号に該当するものと認められる。
2.行政処分の内容
○業務改善命令
(1)再発防止策を策定し、これを確実に実施・定着させること。
(2)策定した再発防止策に係る実効性の検証を行うこと。
(注)検証の結果、不十分な項目があった場合には、その理由及びそれに対する改善方針について報告すること。
(3)法令等遵守に取り組む経営姿勢を明確化し、全社的な法令等遵守意識及び健全な企業文化を醸成するなど、経営管理態勢・内部管理態勢の充実及び強化を図ること。
(4)上記(1)~(3)につき、実施状況及び検証結果の初回報告期限を平成28年6月3日(金)として、書面にて報告すること。以降は、3か月経過毎を期限とするほか、必要に応じて随時報告を行うこと。