概要:日本国債の7日の下落が既に利回り下げ過ぎを懸念していた米国債トレーダーの神経を逆なでし、世界の債券相場上昇にブレーキがかかった。
2023年12月7日 19:40 JST
米国債市場に12月恒例の低流動性の兆し-JPモルガン
日銀当局者発言で2022年12月ショックの再来が懸念される
日本国債の7日の下落が既に利回り下げ過ぎを懸念していた米国債トレーダーの神経を逆なでし、世界の債券相場上昇にブレーキがかかった。
米10年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.18%に達し、今週の低下幅はわずか2bpとなった。日本銀行の植田和男総裁の発言や30年物日本国債入札不調で、日本の10年債利回りが昨年12月以来の大幅上昇を記録した。
米国債は連邦準備制度が近く利下げを開始するとの期待から上昇してきたが、一部ストラテジストは値上がりの行き過ぎを警告している。
RBCブルーイン・ドルフィンの市場分析責任者、ジャネット・ムイ氏は「世界の債券相場上昇は11月に非常に速く、大きく進んだ。一服は理にかなう」と語った。
債券投資家は今週、米国の労働市場に関するデータに対して身構えている。これまでの2つのデータは米連邦準備制度の政策転換という期待を支える内容だったが、8日の雇用統計はそれを覆す可能性がある。
米民間企業の雇用ペースが減速、製造業で減少-11月のADP統計
10月の米求人件数、2021年以来の低水準-労働市場の冷え込み示唆
TDセキュリティーズは8日発表の11月の米雇用統計前に10年物米国債を売ることを勧めた。統計発表を受けて「利回りが急上昇するリスクがある」とみている。JPモルガン・チェースのストラテジストはリポートで、利回りが来年4-6月(第2四半期)についての同行目標を下回ったとして、ここから上昇するリスクがあると指摘した。
米国債市場は12月恒例の流動性低下の兆候も示しているとJPモルガン・チェースはリポートで指摘。TDの金利ストラテジスト、プラシャント・ニューナハ氏によると、これが日銀当局者の発言の影響を増幅している可能性がある。
植田日銀総裁が金融政策について「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことで、トレーダーは12月の日銀政策決定会合が「ライブ」イベントになると考えている。
日本の30年債入札で応札倍率は2015年以来の低水準となり、債券相場は急落。10年物国債利回りは11bp上昇し0.75%を記録。22年12月20日に当時の黒田東彦総裁が10年債の利回り許容レンジを拡大して市場を驚かせた時以来の急騰だった。
ブルーエッジ・アドバイザーズでマーライオン・ファンドの運用に携わるカルビン・ヤオ氏は「今回の入札は、日銀が予想より早く緩和政策を終了させるリスクの一部を浮き彫りにしたようだ」と話した。
一方、BNPパリバ・アセット・マネジメントのマルチアセット世界責任者、マヤ・バンダリ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「日本は、他のG10諸国の中銀が緩和を始める来年早々に、利上げを始める状況にある」と指摘。「日本は世界の他の国とは違うところにいるので、日本の動向で世界の論調が変わることはない」と話した。同氏は6日に日本国債のポジションをショートに転じたという。