概要:無登録で金融商品取引業を営む行為について、8月12日から刑罰が引き上げられ、証券監視委の犯則調査権限も追加された。暗号資産制度の移行や海外取引所への影響を施行時期と登録義務から整理する。

無登録で金融商品取引業を営む行為への罰則が、8月12日から引き上げられた。個人に対する刑事罰は、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金から、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金へ強化された。証券取引等監視委員会(証券監視委)には、無登録業を対象とする犯則調査の権限も加わった。
今回の施行日は、暗号資産に関する新制度がすべて同時に始まる日ではない。8月12日に動き出したのは無登録業への執行強化であり、暗号資産を金融商品取引法の枠組みで規制する制度改正には別の施行段階が設けられている。
今回の改正は、金融商品取引法と資金決済法の一部を改正する法律に含まれる。金融庁によると、無登録業への罰則引き上げと証券監視委の犯則調査権限に関する規定は、公布から20日を経過した8月12日に施行された。
罰則の対象となるのは、登録を受けずに金融商品取引業を営む行為だ。インターネット上で投資商品を勧誘し、契約締結を仲介し、投資判断を一任されて運用するなど、行為の内容によって必要な登録は異なる。サイトの所在地や法人登記の有無だけで、日本での登録義務が消えるわけではない。
証券監視委には、無登録業に対して犯則調査を行う権限が追加された。これまでの警告や裁判所への差止め申立てに加え、刑事事件につながる調査の手段が広がることになる。
改正前の無登録業に対する刑罰は、5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金、またはその両方だった。8月12日以降は、10年以下の拘禁刑、1,000万円以下の罰金、または併科となる。
法改正の狙いは、無登録業者による違法な勧誘や投資詐欺への抑止力を高めることにある。証券監視委の資料では、無登録業と偽計、相場操縦などが組み合わさった事案への対応も課題として挙げられている。
罰則が重くなったからといって、警告リストに掲載された事業者だけが対象になるわけではない。金融庁の無登録業者リストは、警告書を出した時点で無登録営業が確認された業者を掲載したものだ。リストにない業者についても、無登録営業の可能性が残ると金融庁は説明している。
暗号資産については、金融商品取引法の対象に移し、情報開示やインサイダー取引規制、顧客資産管理などを整備する改正が進んでいる。金融庁の施行期日資料では、暗号資産に関する規制見直しは8月12日の20日後施行とは別の区分に置かれている。
現在も、日本国内で暗号資産と法定通貨を交換するサービスを行うには、資金決済法に基づく暗号資産交換業の登録が必要だ。暗号資産の売買や交換の媒介を事業として行う場合も、サービスの実態に応じた登録の確認が必要になる。
したがって、8月12日の罰則強化を「暗号資産の新しい取引規制がすべて始まった」と読むと、施行時期を取り違える。今回すぐに変わったのは無登録業への執行と刑罰であり、暗号資産の制度移行に伴う開示や市場規制は別途整備される。
海外に拠点を置く取引所でも、日本居住者を相手に金融商品取引を業として行う場合は、日本での登録が必要になる。海外当局のライセンスを持っていることと、日本の居住者向けに営業できることは同じではない。
暗号資産交換業でも、金融庁は無登録の海外所在業者を別に公表している。登録の有無を判断する際には、ブランド名、ウェブサイトの表示、所在地、実際の契約主体を分けて確認する必要がある。日本向けの広告や日本語サポートだけで登録済みと判断することはできない。
今回の改正で直接重くなったのは、無登録で業務を行う側の刑事責任だ。海外取引所を利用する個人に対して一律に新たな刑罰を科す改正ではない。一方、無登録業者が日本の利用者に提供するサービスについて、勧誘、契約、入出金、顧客資産の管理を国内法との関係でどう評価するかは、事業者の行為ごとに判断される。
今後の焦点は、海外事業者がどの国に登記されているかではなく、日本居住者を対象にどのようなサービスを提供しているかになる。広告を出す会社、口座を開設する会社、資金を受け取る会社、取引を執行する会社が別であれば、各社の役割と登録の範囲を確認しなければならない。
金融庁は暗号資産関連の制度を段階的に組み替えている。8月12日の罰則強化は、その全体像の中で先に執行面を強める措置だ。暗号資産制度の施行時期や詳細な業務範囲が確定するまで、海外取引所の「日本対応」や「海外ライセンス」を国内登録と同じ意味で扱わないことが、今回の改正を読むうえでの重要な境界になる。