概要:外為どっとコムの顧客ポジションは通貨ペアごとに異なる方向へ変化しており、一社のデータを個人FX市場全体の動向として読むことはできない。

外為どっとコムが8月13日に公表した個人投資家動向では、ドル/円の売りポジションが前日比4.5%減り、買いポジションが1.3%増えた。だが、これは同社のFXサービス「外貨ネクストネオ」の顧客ポジションを円換算した金額の変化である。個人FX市場全体のポジション動向を示す統計ではない。
対円通貨ペアの動きも一方向ではなかった。ユーロ/円、ポンド/円、NZドル/円では売りポジションが減った一方、豪ドル/円、南アフリカランド/円、トルコリラ/円などでは増えた。「クロス円のショートが一斉に減少した」と読むのは正確ではない。
外為どっとコムの集計で前日比4.5%減ったのは、ドル/円の売りポジションの円換算金額だ。価格の下落率でも、売りに回った投資家の人数でもない。比較対象は同社サービス内の前日のポジションである。
同じ集計では、全通貨ペアを合わせた建玉比率が売り42%、買い58%だった。この比率とドル/円だけの前日比は、対象も比較方法も異なる。二つの数字を組み合わせて、市場全体が一方向へ動いたと判断することはできない。
売りポジションが減ったのは、ドル/円のほか、ユーロ/円、ポンド/円、NZドル/円だった。一方、豪ドル/円、南アフリカランド/円、トルコリラ/円では増加した。
したがって、このデータが示すのは、外為どっとコムの顧客ポジションが通貨ペアごとに異なる方向へ変化したということだ。対円通貨ペア全体に共通する売買姿勢や、円相場の先行きを直接示してはいない。
口座数、顧客属性、ポジションを建てた価格帯も、この集計からは分からない。一日の残高変化だけで、個人投資家全体の相場観や、その後の値動きを決めつけるのは難しい。
日銀は7月31日の金融政策決定会合で、無担保コールレートを1.0%程度に据え置いた。次回会合は9月17、18日、その次は10月29、30日に予定されている。日程は公表されているが、各会合の政策結果は決まっていない。
ロイターが7月13~21日に実施したエコノミスト調査では、87人中75人が年末までに0.25ポイントの追加利上げを予想した。利上げ時期を答えた51人では、12月が53%、10月が35%だった。これはエコノミストの予想であり、日銀の決定でも、FX顧客ポジションの変化を説明する証拠でもない。
入力には政府が秋の利上げを容認するとの情報や、9月利上げを約8割織り込んだとの数字もあった。しかし、原報道や織り込み率の算出方法を確認できなかったため、本稿の事実や分析には使用していない。
ポジション情報を読む際は、データ提供者、測定指標、通貨ペアを分けて確認する必要がある。一社の顧客データは、そのサービス内の短期的な変化を知る材料にはなるが、市場全体の総意ではない。前日比の金額変化と建玉比率も別の指標だ。
今回確認できたのは、ドル/円と一部の対円通貨ペアで売りポジションが減る一方、別の対円通貨ペアでは増えたことまでである。このばらつきを無視して「クロス円全体のショート減少」と受け取れば、実際のデータより強い方向感を読み込むことになる。