概要:オランダ警察が月額約1億ユーロを詐取していた国際投資詐欺ネットワークを摘発。700人超の従業員が約20カ所のコールセンターで金融アドバイザーを装い、主被疑者は20代に米国防総省へハッキングした元ハッカーと報じられている。6名を逮捕、オランダ国内被害だけでも約2,500万ユーロにのぼる。

オランダ警察は2026年7月、月額約1億ユーロを不正に得ていた国際投資詐欺ネットワークを摘発したと発表した。同組織は2021年以降、約20カ所のコールセンターに700人超の人員を配置し、金融アドバイザーやアカウントマネージャーを装って被害者から資金を詐取していた。
捜査の中心人物は、5月26日にポーランドの空港で逮捕された46歳のイスラエル・ポーランド二重国籍の男である。ドバイから到着したところを拘束され、オランダに移送された。審査判事はこの主被疑者に対し14日間の未決拘禁命令を出している。
7月7日にはキプロスで45歳と34歳のオランダ人2名および34歳のベルギー人1名が逮捕され、ハードウェアウォレットと現金5万ユーロが押収された。同日ベルギーでも25歳のベルギー人が、7月10日にはアテネで44歳のオランダ人が逮捕された。ベルギー警察もキプロスでコールセンター従業員とみられる5名を別途逮捕している。
オランダメディアは主被疑者を「The Analyzer」の異名を持つエフード・「ウディ」・テネンバウム容疑者と報じている。テネンバウム容疑者は20代、18歳でNASA、米国防総省、イスラエル国会、米軍のコンピューターシステムに侵入し、一部にトロイの木馬を仕込んだ事件で知られる。イスラエルで有罪判決を受け、禁錮18カ月のうち8カ月を服役した。
2008年にはカナダで逮捕され、米国の銀行やカード処理業者から約1,000万米ドルを窃取したスキームに関与したとして米国に引き渡された。2012年に有罪を認め、既に服役した期間と賠償命令で結審している。
オランダ警察は声明で「主被疑者の独自の知識と専門性こそが、組織を長期間解体できなかった理由である」と述べ、同容疑者の技術的バックグラウンドが組織の存続を可能にしていたと指摘した。
被害者は主に暗号資産、株式、コモディティ、FX取引への投資機会を謳うオンライン広告を通じて勧誘された。広告にはオランダやベルギーの著名人が無断で使用され、あたかも投資プラットフォームを推奨しているかのように偽装されていた。
組織は正規の多国籍企業さながらに運営され、本社機能が各国の支部を統括し、各支部は特定のターゲット市場を担当していた。従業員は偽名と技術的手段で身元と所在地を隠蔽し、追跡を困難にしていた。
手口は周到だ。アドバイザーを装う人物が数週間から数カ月にわたりほぼ毎日被害者と連絡を取り、信頼関係を構築する。最初は少額の投資で、偽の取引プラットフォーム上に利益が表示される。実在感のあるダッシュボードに被害者が安心したところで、より多額の資金を暗号資産で送金させる。しかし、実際の取引は一切行われていなかった。
被害者の一人はオランダ警察の発表で「突然すべての連絡が途絶えた。その瞬間、ひどく騙されたと気づいた。自分自身に腹が立ち、蹴飛ばしてやりたい気持ちだった。思い描いていた人生が音を立てて崩れた」と語っている。
オランダ警察には約550件、ベルギー当局には約200件の被害届が寄せられており、オランダ国内の被害額だけでも約2,500万ユーロにのぼる。被害者の大半は1万ユーロ超を失っている。全世界の被害者は数万人規模と推定され、組織は毎日数百人の新たな被害者を生み出していた。
多くの被害者は捜査当局から連絡を受けるまで詐欺被害に気づいておらず、警察が接触したことで追加送金を未然に防げたケースもあった。
捜査は金融分析、IPアドレス追跡、デジタルフォレンジックを組み合わせ、ユーロポールおよび各国法執行機関の支援を受けて進められた。オランダ警察はホスティング事業者と協力し、組織のオンラインインフラの主要部分を停止させている。
警察は被害者に対し、失った資金の回収を持ちかける「リカバリー業者」に注意するよう強く呼びかけている。こうした業者は前払い手数料を要求し、同一の犯罪組織が運営している可能性が高いという。
投資詐欺の典型的な危険信号として、著名人の無断使用、非現実的な利益保証、実際の取引を伴わないプラットフォーム、出金時の突然の連絡遮断などが今回の事案でも確認された。投資前にプラットフォームの登録状況を確認し、保証された収益を謳う勧誘には警戒が必要である。